もっと知りたい、酒屋さんのこと「Get to Know SAKAYA」003

生産者の想いに馳せ、地酒を届ける[籠屋 秋元商店]


RiCE.pressRiCE.press  / Nov 28, 2025

狛江に開業して約120年、厳選した地酒を提案

遡ること123年前、狛江の地にその名の通り竹籠を作る“籠屋”として誕生したのが[籠屋 秋元商店]。2代目になると、酒や弁当、雑誌などを販売する万屋に形態を変更。その後、3代目に代替わりする際、地酒に特化した専門店となった。

[籠屋 秋元商店]店内、階段踊り場の壁面には力強く[籠屋]の文字。

今では狛江にある[籠屋 秋元商店]の他にも、下高井戸店や仙川店、本店と同じく狛江の駅前にはマルシェ狛江店など支店も複数存在。街の酒屋という枠組みを超え、多くの人々に日々地酒を提案している。

籠屋 秋元商店]では、日本酒は約60蔵、焼酎は約40蔵と直接取引をしており、その時々の季節に応じて、店独自のセレクトと提案が光る。

入店してすぐの1F店内。あたり一面並ぶのは厳選された焼酎の数々。

2Fには地域ごとに整理された日本酒の数々。
国内をぐるりと旅したかのようなラインナップに思わず惚れ惚れ。

小田急線狛江駅から徒歩1分。[籠屋 マルシェ狛江店]店長の山崎さん。
マルシェ店では角打ちを楽しむことも可能。

生産者に恋して、一番近くで応援する人でありたい

「美味しいものは世の中にたくさんある。だからこそ、『自分はこんな酒を造りたい!』とビジョンを持った方々の背中を押したくなります」

そう語るのは、[籠屋]酒販部の横山太一さん。横山さんが入社した20年前当時、「まだまだ世の中に知られていない日本酒の美味しさ」に可能性を見出し、[籠屋]の門を叩いた。ターニングポイントとなったのは約15年前、福島の地酒「写楽」の仕入れに際した蔵元とのやりとりだったのだそう。

「蔵元の宮森さんが1度弊社へ営業に来て下さったのですが、その時の会話ではお互い不完全燃焼。実際に蔵へ足を運び、酒を交わし、腹を割って想いを話すことで一気に視界が開けて。それから常々、密に、蔵元さんとのやりとりを最重視しています。追求する酒質ももちろんですが、その背景にある想いを汲み取りたいですからね。本当にその人を、その商品を応援したかったら必然的にそうなると思うんです。恋愛と一緒ですね(笑)」

お店の歴史から蔵元との関係性まで語ってくださった横山さん。

近年、特に「背中を押し続けている」と横山さんが教えてくださったのが、4年前に飲食業界から酒米農家へと転身した通称“クニさん”こと國平恭史さん。

「地元である岡山県の赤磐市で作られる伝統米の雄町は後継者不足の問題を抱えていました。その後継者になるべく酒米農家に転身したんです」

もともと常連だったという“クニさん”の決意にまさしく「恋」する形で、横山さんは全面バックアップ。ここで、[籠屋]を通して長年築き上げたネットワークが生きる。“クニさん”がつくる酒米「國平米」を使用した日本酒を各蔵元と協業でプロデュース。製品化に成功した。

島根県の[富士酒造]と協業してリリースした。

変化の兆し、飲み手・届け手の若年化

若者の酒離れが叫ばれて久しい昨今、実は一概にはそうとも言い切れないのかもしれないのだそう。

「こだわりを持って届け続けたり、駅前にマルシェ狛江店ができたこともあり、お客様には今まで以上にカジュアルに楽しんでいただけている実感があります。時には『美味しい日本酒を教えてください』と訪ねていただく積極的な20代の方もいらっしゃいます」

 [籠屋]には、訪れるお客のみならず、届け手として従事するスタッフが若いことも印象的だった。「日々奮闘する若手スタッフたちの存在が心強い」と横山さんも声を大にする。

店頭で笑顔を届ける石賀さん。

前職がアパレルと異色の経歴を持ちながら、お酒愛を日々お客に届ける高柳さん。

この日の一本

最後に「今日の一本」として[籠屋]の横田川さんにおすすめしていただいたのは、長崎県・[壱岐の蔵酒造]の「無一物」。

 横田川さんが初めて口にした焼酎で、焼酎を好きになったきっかけの一本でもあるそう。麦焼酎でありながらシェリー樽に漬け込むことでふくよかなバニラ香を内包。焼酎に苦手意識がある方にこそ飲んでいただきたい一本だ。

 「特に私みたいなウイスキー党で焼酎を毛嫌いしている人にこそ飲んでいただきたいです。食後にデザート感覚でストレートで飲むのも良いですし、食中にソーダ割りでガンガン飲むこともできますよ」

Photo by Yuki Nasuno(写真 那須野友暉)IG yuki_nasuno
Text by Shogo Sugano(文 菅野匠悟)

 

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