エディターズノート

「RiCE」第46号「パスタ」特集に寄せて


Hiroshi InadaHiroshi Inada  / Apr 6, 2026

RiCEの第46号は初めてのパスタ特集です。どこかのタイミングでやっていたのでは? という気がわれながらしますけれども、正真正銘初でした。過去45冊も作ってきて一度もないのが不思議なくらい。なんたってタコスの特集も、タイカレーの特集も、前号のようにジビエ特集までもやってきたんですから。

そうしたニッチを攻めるのが好きなきらいは若干ありますが、とはいえいつかやりたいと温めていた企画ではあり、逆にいえば季節もタイミングもなくいつやってもよかったからこそ、なんとなくここまで至ったのかもしれません。だってパスタは、あまりに日常の風景に溶け込んでいるから。

たとえば日本が誇るナポリタン。こんなにも美味しくて懐かしいソウルフードはなかなかないと思います。個人的にも人生トップファイブにランクインするくらいの回数を食べてきました。いまだに喫茶店では必須のメニューですし、街を歩けばパスタに特化したチェーンは珍しくありません。もちろんイタリアンレストランといえばハイエンドからカジュアルまでしっかりグラデーションがあり、日本国内で8000軒以上、一大ジャンルとなっています。

さらにスーパーやコンビニ、グローサーリーストアなど小売店に目を向けるというと、パスタコーナーの存在感はやはりピカイチです。太さも形も様々なバリエーションのパスタが並び、それに和えるソースの種類もたくさんあって、所狭しと並んでいます。

要は家でもパスタ、外でもパスタ。本格的なものからインスタントなものまで。さらに和風オリジナルからイタリア各州に受け継がれる郷土料理まで。こんなにもわれわれはパスタに囲まれて暮らし生きている。それって不思議といえば不思議じゃないですか?

小麦粉と水(あるいは卵)。たったこれだけの構成要素をただ捏ねるだけで、なぜこれほどまでに多様な形状と食感、そして宇宙のように広がるバリエーションを生んだのでしょう? スパゲッティにマカロニ、ペンネにラザニア、その他何百種類とあるパスタを、イタリア人たちは手ずから生み出してきました。

さらにそうした麺の美味しさをどうやって増幅させられるか? という命題を、彼らは地元の食材とともにいろんなソースを考案することで、ますます多彩に広げてきました。そしてその一皿一皿が、遥か遠くにある日本のような国でも愛され受け入れられ、かつ精妙なまでに再現されたり、また新たな食材を掛け合わせることで新鮮な魅力が引き出されたりしている。

パスタは、ローカルとグローバルが大胆にクロスオーバーする普遍性を備えた稀有なフード。世界最大のコモディティであり、かつメディアでもある。シンプルであるがゆえどこまでも多様に広がっていく。

今回の特集では日本全国からパスタの名店を厳選しつつ、イタリア現地にまで足を運びその本質を紐解きました。レシピの掲載も過去最高に。皆さん、美味しいパスタ、食べてますか?  

RiCE編集長 稲田浩

イラスト 下田昌克 Illustration by Masakatsu Shimoda

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