エディターズノート

「RiCE」第45号「ジビエ」特集に寄せて


Hiroshi InadaHiroshi Inada  / Feb 6, 2026

RiCEの第45号は初のジビエ特集です。食のメディアとしていつかは作りたい、向き合ってみたいと温め続けてきた念願企画。やっと実現に漕ぎ着けました。そしてやるならいましかない! という謎の切迫感とともに、ようやく期が熟したような感慨もありつつで、2026年最初の号として世に問うことにした次第。

世に問うなんていうと大仰に聞こえるかもしれません。とはいえ、ジビエ=野生の食肉に対してどういうスタンスで臨むべきなのか。われわれRiCEにとってめちゃくちゃ本質的であり、かなりクリティカルなポイントに違いない。素知らぬ顔でスルーしてしまってはフードカルチャ―を掲げる雑誌の名折れでは? だってこれ以上様々なイシューが詰まったトピック=食のジャンルも他になかなかないから。

そしてやるならいま! と感じたきっかけのひとつには、お察しの通り昨年世間を騒がせ続けたクマ問題があります。なんたって年末に「今年の漢字」として発表されたのが熊ですからね。ことほどさように世間の耳目を集めまくった熊。その一文字が時代を象徴しているように感じられるのは、それだけいろんな論点および核心が含まれているからだと言えるでしょう。

熊に限らず、山肉ともいわれる鹿、猪、アナグマ、鴨に代表される様々な野鳥などは、牛や豚、鶏といった家畜動物とは一線を画しています。言うまでもなく野生鳥獣は、自然と共に、誰の世話も受けず自力で生きている。

そんな自由に生きる鳥や動物たちを、銃にしろ罠にしろ網にしろ、捕らえて殺すのはけしからん。可哀想だと言う意見が一定数あるようですが、ではスーパーに並ぶ牛肉や豚肉、鶏肉などが捌かれるのはどうなのか。さらに有害駆除が無ければ農作物にも被害が及びますし、どんな主義主張、ライフスタイルであろうと誰も無関係ではいられません。

でありながら、鹿や猪に代表される捕獲された山肉の利活用は昨今たった一割程度で、約9割が廃棄処分されているそうです。環境破壊など人間の都合により生じた生態系の変化により増加した獣害を、人間の都合で食い止めている。ならばせめて美味しくいただくことこそが命に対する最低限の供養、いや礼儀になるのではないか。

殺生という言葉には、ただ「生き物を殺す」というだけなく、「殺して生かす」という発想の転換があってしかるべき。取材先でそんな話を伺いました。猟師の方々は、狩猟免許だけでなく様々な技術や経験値を必要とし、危険を伴いながら日々命のやりとりを重ねています。高齢化と後継者不足など課題も多い。

とはいえ新世代も生まれています。せっかくいただいた命を最大限活かして余さずおいしくいただこう。生産者から消費者まで、作り手から食べ手まで含めて、そんな動きが様々な領域で起こり加速しています。そして未知のおいしさ、多様さに驚いたり感動したり。ジビエの時代、その足音が聞こえてきませんか。

RiCE編集長 稲田浩

RiCE No.45 MARCH 2026 特集「ジビエの季節」  

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