RiCE編集部調べ。“必食”サイドメニュー!

〈東京三大〉しゅうまい


RiCE.pressRiCE.press  / Jan 27, 2026
つい、必ず頼んでしまうメニューがある。でも、それが主役として語られることは、案外少ない。いわゆる「サイド」と呼ばれる料理。主役にはなりきれないかもしれない。それでも口にすれば、その店がこの料理をつくり続けてきた理由や、料理人の熱い思いがきっと伝わるはず。目立たないけれど、店を支えているのは、案外こういう一皿だったりもする。そこで始めたのが、〈東京三大〉という企画だ。東京、そしてその近郊で“その店に行ったら、つい頼んでしまう一皿”を求めて。目的地になる一軒。教えたくなる一軒。行きたくなる一軒。そんな自信のある店だけを選んだ。今回はあつあつジューシーな「しゅうまい」編!

餃子名店の、もうひとつの主役[您好・幡ヶ谷]

1982年に店主・野坂由郎さんが創業。東京屈指の餃子の名店として知られる幡ヶ谷[您好]は、連日予約で満席の賑わいを見せる。ただ、一言申し上げたい。餃子で満足して帰るのは、まだ早い。その主役にも劣らない、焼売にもぜひご注目を。一見、ひと口でいけそうな顔をしているが、噛み進めるほどに食べ応えが増して満足度が高い。まずは、断面を見てほしい。大きめに切られた豚肉、貝柱、椎茸などがごろごろごろ。存在感たっぷりの具が、土砂崩れのように口中にドドドっとなだれ込む。肉という「山のもの」に、貝柱という「海のもの」の旨み、そしてレンコンという「畑のもの」のシャリッとした歯ざわり。素材の出自が違うから、味も食感も単調にならない。

「餃子は皮、焼売は肉」。そんな考え方のもと、味付けは極力シンプルで、素材の旨味を正面から出す。それぞれの強みを活かしながら、一粒として成立させているのが、この焼売の完成度の高さだ。そして、この中身をきちんと受け止めているのが、底に施された焼きの仕事である。蒸したあとに焼きを入れることで、底面はカリッと香ばしく、噛んだ瞬間に心地よいコントラストが立ち上がる。

「“焼いて売る”から焼売なんですよ」と野坂さん。そもそも焼売は、家庭で蒸してすぐに食べられていた料理だった。それが売り物として流通するようになり、作り置きしたものを温め直す過程で、底に溜まる水分を飛ばすために”焼き”をつける工夫が生まれた。その成り立ちを、いまも忠実に守っているのが[您好]流。取材の最後には、レシピの話まであっけらかんと教えてくれた。秘密はなし、というスタンス。けれど、それで同じ味になるかといえば、そう簡単な話でもない。積み重ねてきた時間と手の感覚は、簡単に真似できるものじゃない。焼売を食べたほとんどの人は、その隙のない仕上がりに目を見開き、味わいに心を奪われる。餃子はもちろん必食だが、通い慣れた人ほど最後にこの焼売へたどり着く。

[您好]
〒151-0066 東京都渋谷区西原2丁目27−4 升本ビル
03-3465-0747
17:00〜21:30 LO 月日休

力強い肉の旨みを、真っ向から包んだ焼売[菱田屋酒場・駒場東大前]

思わず、生まれてきてくれてありがとう、と頭を下げたくなる。詣でたくなる理由は、まずその大きさだ。1個約85gの焼売は、まるで豚肉を積み上げた小さな山。ひと口噛めば、粗切りにした国産上豚のたくましい食感と、肉肉しい旨みを一気に浴びることになる。ひき肉ではなく、手切りされたぷりっとした食感と粘り。思わず無言になり、目を閉じて噛むことに集中…なんて卓も。澄んだ肉汁を余すところなく味わいたくなるからだ。もうこの時点で、心が高揚しているのだが、その力強い肉を受け止めるのが、玉ねぎの甘み。国産玉ねぎを大きめに切り、シャキッとした食感を残す。さらに、ごま油を加えることで、コクと丸みを添えている。玉ねぎの甘みと肉の風味を前面に出すために、具材は増やさない。

ふと、その着想源について尋ねてみる。「コンビニの肉まんを食べたときに、たまに肉の脂身がぽろっと出てきて、嬉しくなることありませんか?」そう話すのは、[菱田屋]の店主・菱田アキラさん。確かに、あれはうれしい。ごろっとした肉感に、ぷりんとした脂身がほろりと舌の上で溶ける、あの感じ。そんな日常の小さなシーンをヒントに生まれたのが、この名物焼売だった。

高く積み上がった豚肉の絶壁!肉肉しさに負けない、黒胡椒のパンチがいいアクセント。

駒場東大前で長く愛されてきた[菱田屋]には、正直、おいしいものがいくつもある。ランチは行列、夜も賑わいが絶えない。看板メニュー「生姜焼き」は衝撃的だし、刺身や「まぐろフライ」など魚料理も抜かりない。「麻婆豆腐」だって、もちろん間違いない。だからこそ、大勢で訪れて、たらふくになるまで楽しんでほしい。その人気ぶりを物語るように、実はこのエリアには、ふたつの[菱田屋]がある。ひとつは、明治後期創業の老舗定食店[菱田屋]。そして、そこから50メートルほど離れた場所にあるのが、姉妹店の[菱田屋酒場]だ。現在、酒場の店主を務めるのがアキラさん。一方、定食店の[菱田屋]は奥様が切り盛りしている。どちらも昼夜営業で、[菱田屋酒場]でも定食屋の名物料理をあれこれつまみながら、種類豊富なお酒を楽しめるのがうれしい。使い勝手は違えど、両店で楽しめる名物はいくつも共通している。だから、幸運なことにどちらを選んでも、この焼売には辿り着ける。ちなみに、焼売は一皿2個。大ぶりだけど、気づけば一人一皿あっという間に完食である。

[菱田屋酒場]
〒153-0041 東京都目黒区駒場1丁目11−12 クレリエールサノ
03-6336-8891 
平日11:30〜14:00 17:30〜22:00 土 17:00〜22:00
日・祝休 IG @hishidaya_sakaba

 

むっちり、弾力。豚肉と玉ねぎ、半々で仕上げたジューシーな一粒[東京チャイニーズ 一凛・新富町]

東京・築地の大通りを新富町のほうへ一本入ると澄んだ空気が抜ける一本道がある。周囲には、ミシュランの星が瞬くラーメン店[銀座 八五]や、一昨年末に約半世紀の歴史に惜しまれつつも幕を閉じた[魚竹]など、実力派が肩を並べるこちらのエリア。昼どきともなれば、あちこちの行列は日常風景。2013年のオープン以来、その光景の常連となっているのが[東京チャイニーズ 一凛]。ランチタイムは行列必至、13時を回っても客足が途切れない。10年以上この街で愛され続ける、そんな勢いのある店だ。

夜は、季節の食材を使ったおまかせコースが中心。ランチは、コースの中でも名物である「よだれ鶏」や「陳麻婆豆腐」などのメインに、スープや漬物がついた定食スタイル。ここで、皆さんに耳寄りな話をひとつ。その定食に、なんと焼売もついてくる。そう、本記事の主役である焼売は、昼でも夜でもこの店で味わえる。

この焼売は、いわゆる小籠包のような肉汁がドバッっと溢れるタイプじゃない。大きめに仕立てているが、後味はむしろ軽やか。齧ればむっちりとした弾力があり、じんわりとしたジューシーさと、品のいい甘みが広がっていく。そのジューシーさの正体は、粗挽き肉と同量に配合された玉ねぎ。大きめにカットした玉ねぎがミルフィーユのように層をなし、噛むたびに水分がじわっと滲み出る。「重たさを残さず、コースの流れの中でも食べやすく仕立てている」と店主の石塚元太さんが教えてくれた。お店のルーツは、築地場外の素材を軸に中華を組み立てるという姿勢。素材を増やすのではなく、素材を活かす。その考え方は、この焼売にも表れている。具材は、豚肉と玉ねぎだけ。それぞれの甘みを前に出すため、味付けは塩、オイスターソース、少量の醤油、生姜と控えめ。黒胡椒は使わない。

この焼売、単体でももちろんおいしい。けれど、[東京チャイニーズ一凛]では“完成形”がもう一段先にある。実はさきほど名物とお伝えした「よだれ鶏」のタレに、焼売をくぐらせる。ゴマがたっぷり効いたタレがプチプチと焼売に絡み、これまた絶品。これが定番の食べ方。

口福を満たしてくれる最強のコンビネーション!

夜はコースの中で「よだれ鶏」と出会えるが、ランチは少し迷う。なにしろ「よだれ鶏」に「汁なし担々麺」、「蟹とレタスの炒飯」……強いメニューがずらりと並ぶからだ。それでも初めてなら、まずは「よだれ鶏」から入ってほしい。昼でも夜でも、この店のおいしさの芯をいちばんストレートに味わえる一皿だから。と、ここまで焼売の話をしてきたけれど、ちなみに「よだれ鶏」も思わず声が出るほど飛び抜けている。「焼売」と「よだれ鶏」、どちらか一方では終われない。まずは、このコンビでお試しを!

[東京チャイニーズ 一凛]
〒104-0045 東京都中央区築地1丁目5−8 樋泉ビル 1F
03-3542-6663
月火木金土日 12:00〜14:00   18:00〜21:30 
水休 不定休あり IG @ichirin_0308
Photo by Mishio Wada(AMI)  IG @mso_340
Text by Sakurako Nozaki

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