連載「この町の正解。酒場のいい順路」#3

食通に聞く、ローカルはしご酒ガイド|鹿児島編


RiCE.pressRiCE.press  / Nov 25, 2025
旅のはじまりは、ちょっとした戸惑いから始まることがある。
さて、どこへ行こう?
旅先でふと湧きあがるそんな疑問に、やっぱり頼りたいのは、その街を知る人の“
声”。

今回案内してくれるのは、東京・江戸川橋で自然派ワインと食料品を扱う[SHOPPE]の店長をつとめる新田悠子さん。

生まれは鹿児島で、大学進学を機に上京するも、年に数回は地元に戻り、最新の鹿児島ローカルをアップデートし続けている。帰省するたびに欠かさないのが、天文館〜名残堀のはしご酒。観光では見落としてしまいそうな路地裏から、地元の人が集う角打ち、深夜のラーメンまで。新田さんがいつもの順番でめぐる、鹿児島の(なが〜い?)夜をご一緒に。

鹿児島市(天文館・名残堀)のはしご酒  by 新田悠子
17:00 [ふとし商店]
19:00 [菜菜かまど] 
21:00 [Trommel]
22:30 [HAY]
00:00 [のり一]

 

 

17:00 [ふとし商店]角打ちで始まる、帰省の一杯目。

たまに帰省すると、母たちと飲みに出かけることが多くて。夕方の早い時間からスタートして、町をぶらぶら散歩しながら目的のお店に。最初に行くのは、ノスタルジックな空気が残る名残堀エリアのお店。見た目はローカルなコンビニみたいなんですが、暖簾をくぐると手づくり感あふれる角打ちの世界が広がっています。

私は一杯目は必ずビールなので、鹿児島・徳之島出身のお母さんが作るつまみがちょうどよくて。お酒が進む味噌ピーは今まで食べた中でいちばんおいしいと思うし、玉子おにぎりはマスト。シンプルなのに、なんだか懐かしさがあるんです。(店主ご夫婦とお話ししていると、“おいしい”の秘密を教えてくださったりもして。)

19:00 [菜菜かまど] 路地裏で、鹿児島の味を。

そこからまたぶらぶら歩いて、天文館エリアへ。初めて行く人は「本当にここに?!」と思うような、細い路地裏にひっそり佇むお店なんですが、店内に一歩足を踏み入れると、外とは違うゆっくりした時間が流れていて、落ち着いて団欒を楽しめる空間です。

ここで必ず頼むのが、ゲンコツくらいの大きさの揚げたてのトビウオのつけあげ(さつま揚げ)。鶏刺やキビナゴ、鰹の腹皮など、鹿児島らしいメニューが揃っていて、あれば鯖のお刺身はぜひ食べてほしい一皿。最初はビールで始まり、気づけば終盤は芋焼酎になっていることが多いです。

21:00 [Trommel]一杯でも、ボトルでも。寄り道したくなる場所。

ある程度お腹も満たされて、母たちは早めに就寝。私も一緒に自宅のほうへ歩いて帰るんですが、ちょうどいい酔い覚ましだなあと思いながら歩いていると、[Trommel ]の灯りにどうしても吸い寄せられてしまいます。ワインを一杯だけ飲んで帰る日もあれば、ボトルを買って家でゆっくり楽しむ日も。お料理もきちんと揃っているので、一軒目として使うのも◎。ひとりでも、みんなでも来やすいお店なんですよね。

22:30 [HAY]夜の続きはご近所で。

一度は帰宅したはずなのに、どうしてもまっすぐ家に戻れなくて…。元気があれば、また夜の散歩に。(「せっかくだから行っておいで」と母たちが後押ししてくれるのもあって…笑。)

一軒目の[ふとし商店]から歩いて30秒ほどの距離なんですが、店主も、お客さんとして来ている方々も馴染みの顔なので、つい立ち寄ってしまう。でも扱っている[SANKAKU BEER WORKS]のクラフトビールがタップで飲めます。つまみになりそうな一皿を頼んだり、お腹の具合によってはパスタをお願いして、ワインに移行。季節ごとに食事のメニューが変わるので、その時に気になるものを選んで楽しんでいます。

00:00 [のり一]〆は名店でラーメン。

都内にいるとなかなかやらないんですけど、天文館にいるとつい寄ってしまう笑。私にとっての〆の一杯です。鹿児島のラーメンって、同じ九州でも他県とはまた違うと思うんですが、[のり一]のラーメンはその中でも特にあっさりしていて、飲んだ後にちょうどいい。結局ビールなんかも一緒に頼んでしまって、ようやく帰路へ。

 

はしご酒のルートだけでも十分に濃い夜だったけれど、新田さんは「つい寄っちゃうんです」と、街の日常的なお気に入りも惜しげもなく教えてくれた。せっかくなので、ここで少しだけご紹介したい。

「帰省するとついつい寄ってしまうのは、[山形屋]や[かごしま特産品市場] の「かご市」、そして少し離れたところにある[おいどん市場]でしょうか。

[山形屋]は、鹿児島県民なら一度は行ったことがある老舗百貨店。いくつか建物があるんですが、1号館の7階に大きな食堂があって、そこの焼きそばが名物。1号館と2号館の地下にまたがる食品売り場には地元の食材もそろっていて、歩いているだけでも楽しいです。

「かご市」にはお土産を買うときに立ち寄ります。調味料や小さめのポーションのお菓子など、人に渡しやすい鹿児島らしいものがいろいろ並んでいて便利。

[おいどん市場]は少し離れた場所にあるんですが、いわゆる道の駅的なお店。新鮮な野菜や果物がたくさん揃っていて、ついつい買いすぎてしまうんです…笑。店頭からそのまま発送もできるので、東京の自宅に送ることもあります。

あとは両棒餅(ぢゃんぼもち)を食べに[中川家]か[平田屋]に行くことも多いです。桜島が綺麗に見える仙巌園や磯海水浴場の並びにお店が数軒あって、その中でもこの二軒によく伺います。みたらし団子とはまた違う、甘じょっぱいタレとお餅の食感が唯一無二で、帰省すると食べたくなる味なんです。」

案内人:新田悠子

鹿児島生まれ。2023年に江戸川橋駅エリアにオープンしたワインと食料品の店[SHOPPE]の店長。大学で上京しつつも年に数回帰省して鹿児島情報をアップデート中!  IG @shoppe_tokyo

Text by Yuko Shinden(文 新田悠子)
Edit by Sakurako Nozaki(編集 野﨑櫻子)

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