『お茶の時間 Art of Tea』掲載

福田春美さんと体感した、奔放な茶の世界


RiCE.pressRiCE.press  / Aug 28, 2020

RiCE 15号「お茶の時間 Art of Tea」ではさまざまな特別企画が実現しました。中でも、ブランディングディレクターの福田春美さんが案内してくれた「Free-Spirited Styles of Tea 奔放な茶の世界へ。」では、有名建築家・藤森照信さんの「空飛ぶ泥舟」という空中茶室や、陶芸家で茶人の市川孝さんによる茶席の様子など、お茶が結ぶ深淵な世界観が美しい写真とともに誌面に立ち現れました。

雨が続く中での思い出深い撮影を福田春美さんに回想していただくとともに、福田さんが愛する「奔放な器作家」のみなさんを改めてご紹介いただきました。

— 「奔放な茶の世界」というテーマを思いついた経緯を教えてください。

成蹊大学の茶道部を立ち上げた父は禅と茶に傾倒した人でした。父の書斎には、茶湯、千利休、器、禅などの本が山ほどありましたが、幼い頃は興味が湧かず、大人になっても理解しようという気持ちにもならず、むしろ難解で苦痛でさえありました。

歳を重ね、特にここ数年で中国工夫茶に出会い、その自由さや奔放さに通じる考え方を知り(老子が特に好きです)、茶湯に対して“理解できない”と抱いていたコンプレックスのようなものから解放され、救われた思いがしました。茶の楽しさ、時間芸術の美しさ、そして自由な茶人、自由な作り手との出会いを通じて、より奔放でプリミティブな世界観の輪郭を表現してみたいとこのページを作らせていただきました。

▲ 草木や土を雨がたたく音が響く中、市川孝さんのお茶が清らかさとあたたかさを身体いっぱいに広げてくれた

— 撮影で印象に残っていることを教えてください。

建築家・藤森照信さんの世界観が大好きで、以前、神長官守矢史料館にお伺いしたときに「ここで撮影したい」と思い、まずは館長さんにご連絡をさせていただきました。藤森さんサイドをはじめ、作家さんたちにもお一人ずつ、丁寧に企画意図を伝えすることを意識しました。一つひとつ許可をいただくたびに、頭に描いていたこの誌面の内容に近づいていって、積み上げていくような楽しさがありました。

撮影当日はあいにくの雨で、とてもハードな現場となりましたが、みなさま、このビジュアルを作り出すのにご協力してくださり、久々に充実感のある撮影となりました。

▲ 藤森照信さんの「空飛ぶ泥舟」

— 福田さんは、作家さんの中でも「ニューエイジ」と呼べる方たちに注目されているそうですが、どのような作品なのでしょうか。

工夫茶の茶器ってフェミニンだな…って思っていて。私はもう少しゴツゴツした作品の中に引き締まるラインやシャープさがある形が好きで、その表面から「カテゴライズされたくない」という感じが出ている作品が好きです。その作品たちを「ニューエイジ」と勝手に私が言っているのですが、それは作家さんの年齢ではなく、生活工藝の流れとも違う、もっと自由で、もっと奔放に、アートピースにも近い。ものによっては茶器として作ってないかもしれない作品や、茶器でもそこに彼らの独自の考え方が入っている、そんな作家さんを集めました。

使う側の見立ての楽しさで茶器にもなる。そんなカテゴライズされない自由度の高い精神をお持ちの作家さんとその作品となります。彼らの少し先の未来の作品たちがいつも楽しみで仕方がありません。

今回、高橋恭司さん、ウェイ・チェンさん、清水志郎さん、中村友美さん、河合和美さん、泉田之也さん、中田光さんという作家7名の個性的な作品が一堂に会しました。各作家について、福田さんにご紹介いただきました。

1. 高橋恭司

ファッション写真の一時代を作った高橋恭司氏が地元・益子で陶芸品を作られた。 還暦を迎え、文人趣味ならぬ、写人趣味というタイトルで写真だけでなく書や陶芸、ペインティングもみせた恭司さん。今回、奔放な茶というテーマに、どうしても入れたいと思った作品。

2. ウェイ・チェン

中国景徳鎮の陶芸家。一見で彼の作品と判断できる強い特徴は、日本の鉄瓶の形と、中国茶器のトラディショナルな材料と造形的な様式を軽やかに混合している。お茶のための器という基本姿勢を守りながら、外見は道具と捉えない彫刻的なアプローチをしている。

3. 清水志郎

自ら土を掘り、粘土にして、器にする。作る器も、清水さんご本人も、誰にもカテゴライズされない。日々、目の前にある土と自由に対話することによる、作品と自分を縛り付けない姿勢が常にその器たちを進化させているのだが、彼はそれを無意識にやってのける。

4. 中村友美

奈良を拠点にする金工作家・中村さんは、定番の薬缶を作っていると心が整うという。ひとたび彼女の作品を見れば、その独特の佇まいがずっと脳裏にこびりつくことでしょう。「心地よい着地を目指し、あきないものを作る」という中村さんの薬缶を私も心待ちにしている。

5. 河合和美

河合さんは、自らを自然の一部だと認識して作陶していると感じる。 土がふと見せるささやかな表情に惹かれ、「自然のエネ ルギーの結晶核的な存在として差し出される素材の力をエッセンス的に取り入れている」という。成形の時の歪みやしわに、庭の土を水で溶き纏わせている。

6. 泉田之也

「身のまわりの地層や風化の美しさに惹かれる」。自分の心に素直にあろうとして作り、それが様々な茶人に使われることをどう思うかと聞くと「次に作るものは発見されまいと逃げるが、また発見されてしまう」と楽しそうに話す。どこま でいくのか、見続けたい作家の一人。

7. 中田光

モダンであることと古典的な意匠を使うこと。この一見相反することを見事に同居させている。モダンは味気ない量産品に傾き、古典は野暮に陥る危険性があるが、中田さんの作品はキリリとしたシャープなフォルムに、柔らかみのある釉薬や文様を見事に調和させている。

こちらの記事は、RiCE 15号「お茶の時間 Art of Tea」に掲載されたものを再編集しています。雑誌の詳細・ご購入は以下からご確認ください。
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RiCE EC (STORES)

CREDIT
Produce & Interpretation by Harumi Fukuda
Photography by Tetsuya Ito
Cooperation by Hidenori Take (tonoto) & Chizuru Atsuta

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