365日×竹本油脂 「あんゴマー」発売記念

杉窪章匡さんスペシャルインタビュー(後編)


PromotionPromotion  / Jul 26, 2019

考え抜かれたパン作りへのプロセス

[365日]と[竹本油脂]のコラボレーションにより生まれた「あんゴマー」。前編ではその開発の裏話に迫ったが、後編は杉窪氏にとっての理想のパン作りのあり方や、新商品を開発する上で大事にしていることを聞く。

▲ 従来のパン製法のとらわれることなく、数々の革新的なパンを創造してきた杉窪さん

—-失敗しない方法ではなく、美味しくするために何が必要なのか考えるということですが、そのためにはロジカルな思考が大事になってきますね。

そうですね。感性も大事ですけど、理論的な部分と両立させることができるといいと思います。理論を知らないと、料理の中で起こっている科学変化が、正しい美味しさに繋がるものなのかがわからないんですよ。そして感性だけ勝負している人は、結局のところ再現性が低い。再現性っていうのは自分自身の再現性ではなくて、自分が得た知識や技術をどれだけ人に伝えられるかということ。もしかしたら10人に伝えることはできるかもしれないけど、感性だけでやったら100人には伝えられないという具合です。

—-伝えられないことが、逆にすごいみたいな考え方もありますよね。

全然すごくないんですよ。サッカー選手だって感覚だけでやっている人より、頭のいい選手の方が強いと思うんです。運動神経、本当にフィジカルだけの人って通用しないですからね。昭和の時代には、そういうのがもてはやされたことがわかるんですけど、今の時代に、「この人にしかできません」みたいなことって評価されている意味もわからないです。例えばフランスの三つ星レストランでは、基本的にシェフは料理を作らないですよね。でも自分の考えみたいなものをしっかりディレクションして、どれだけ伝えられるかが勝負だと思うんです。たくさんのスタッフを使うわけじゃないですか。だからこそ、考えや思想を感染させる能力の方が重要ですよね。

▲ [365日と日本橋]では、本誌RiCEをはじめ雑誌、書籍なども販売中

—-理論は人に伝えられると思うんですけど、感性は人に伝えることが難しいですよね。

そのバランスですよね。職人に必要なのは技術と知識理論、あと感性だと思っています。技術はみんな、10年も同じことを続けていれば絶対身につく。でも知識理論や感性は身につかない人がいっぱいいます。

—-今回のパンにも、そのあたりを両立させた部分がたくさん詰め込まれているわけですね。

そうですね、前提となる理論としては使う材料がどう作用するか、わかってないといけなくて。液体油脂を入れるとこういう食感になる。バターを入れるとこういう風になる。じゃぁ味のところは…っていうのが全部理解できていないと。でもみんなそういう勉強をしているわけではないですからね。レシピや配合を覚えて、作れるようになればOKなんですよ。でも、「その材料が一体どういう影響を与えているのか」「これがなかったらどういう味になるのか」みたいな細かい部分まで考えないと。最短で答えを目指しているから、実験をしないでたどり着けちゃう。でも実際にはたどり着いてないんですよね。与えられたレシピを再現する上では問題ないかもしれないけど、そこで満足したら、それより上には絶対にいけない。

—-より美味しくしよう、と常に考えながらやっていくということですよね。その場合はどのように着地点を見つけるのでしょうか。

入れる食材の配合や、調理の過程を整理すれば、だいたい味の想像はつくんです。そこでイメージしたものを何度も試作して、最終的にどれだけのレベルまで上げられるのかが戦いですね。

—-今回の完成度はいかがでしょうか。

とてもいい感じだと思います。ごま油の風味も際立っているし、そもそもこの素材、[竹本油脂]のごま油がいいですからね。

—-日々新商品を開発されていますよね。

自分の味覚に絶対的な自信を持っているのですが、開発した商品が売れる、売れないというのはまた別の次元の話です。あと自分の中の100点では考えないようにしています。パンを作って、売るとなった時には、市場においての100点を考える。そして「売れる」ということは味だけじゃなくて、見た目や価格のバランスも大事です。

▲ パン屋としての機能だけでなく、こだわりを持ってセレクトされた食料品もラインナップ

—-売れる・売れないもイメージできるものなのでしょうか。

だいたい僕が、「うわー!すげー!」って思ったものは売れないんです (笑) 。多分ちょっと早いんだと思います。僕が、「これすげー!」っていうのは、10年後とか20年後の感じなのかなと。

—-普段からたくさんのことを考えながらパン作りに向き合っている杉窪さんですが、最後に「あんゴマー」について一言お願いします。

プロ的な話をすると、50%の液体油脂を入れて、この食感が出せることはほとんどなくて。基本的に”パンじゃないもの”になってしまうと思うんです。だから実際にぜひ食べてみてほしい。本当にごま油の風味が際立ったブリオッシュに仕上がっています。

「あんゴマー」は人気ブーランジェリー[365日]日本橋髙島屋S.C.新館店である[365日と日本橋]にて販売中。6月1日から8月31日までの期間限定なのでお買い逃しなく。

365日と日本橋
住所 : 東京都中央区日本橋2丁目5−1 日本橋高島屋S.C.新館1階
営業時間 : 平日 (7:30~20:00) 土日祝 (10:30~20:00)

竹本油脂
https://www.gomaabura.jp

TAGS

RiCE編集部からお便りをお送りしています。

  • 最新号・次号のお知らせ
  • 取材の様子
  • ウェブのおすすめ記事
  • イベント情報

などなど……RiCEの今をお伝えするお手紙のようなニュースレターを月一回配信中。ご登録は以下のページからアドレスとお名前をご入力ください。

ニュースレターの登録はコチラ
PARIYA CHEESE STAND Minimal Bean to Bar Chocolate
BALMUDA The Kitchen
会員限定の最新情報をいち早くお届け詳しく