2019年インドの旅

ヘリテージホテルでインターン デリーでインド人コックをリクルート (後編)


RiCE.pressRiCE.press  / Sep 23, 2019

RiCE最新号「スパイスカレーの深層」では、『2019年インドの旅』と題し、インドを旅したスパイスカレーの名店オーナーたちに話を聞いた。中でも三軒茶屋[シバカリーワラ]店主・山登伸介さんの旅の様子を、RiCE.pressにて特別にお届け。本記事はその後編です。前編はこちらからどうぞ。

インドへ向かったもう一つの目的は、現地でのインド人のリクルート。今まで採用したインド人コックは日本在住者のみであり、直接現地から連れてくるのは初の試みだ。知人から「日本に来たい」と考えている料理人を紹介してもらい、実際に会いに行くことに。簡単に面接も行い採用を決めたが、その決め手となったのはやはり料理のようで、「パーソナリティとしては、プライドが高そうなんだけど、ちょっと可愛いところもあるやつで。でも最終的には腕がすごく良かったので一緒に働くことを決めました」インド人コックの料理を評価する上で大事なポイントは、塩分や油分のバランス感覚。どちらもインドの方がどうしても強くなる傾向にあるのだと山登さんは語る。そんな中で今回採用したコックは、この違いにも順応できるはず、と判断したのである。 

▲山登さんが好きな町だというオールドデリーのストリート。旧ムガル帝国が栄えた頃の城下町で、雑然としているが独特の雰囲気を醸す。

塩分や油分の感覚が異なるように、国が違えば何かしらの差異は生じる。中でも食材の部分では、「意外に思うかもしれないけれど、インドで食べるバターやチーズって日本のものより美味しいんです。乳製品全般、基本的にとても濃厚で。 なぜなら脂肪分や殺菌の規制やルールが違うから」と山登さん。このようなシステム的な違いだけでなく、地理的要因による食材の違いも当然ある。フレッシュな南国のフルーツは、同じアジアといえ ど日本の気候には馴染まない。入手できる食材が違うことによって、「インドで食べたものと同じ料理を、日本の食材を使って作っても味が出ないこと」は、よくあることなのだそうだ。

▲[ザ・ボンベイ・キャンティーン]という、インド最注目のレストランで食べたインディアン・セビーチェ。薄切りにした鯛を花に見立てている。ソースはソルカディという、ココナッツとコクム(酸味の強い果実)を合わせたもの。

「食材を手に入れられる条件が違うので、インドで食べた美味しいものを、こっちで再現する難しさはあります。でもそれってインドで食べたものより、もっとクオリティの高い料理を出したいからこそ、 逆に考えなきゃいけない部分かなと思っていて。そういう時にすべきことは『日本人に食べやすい味に』とか、『辛さを抑える』みたいな安易な調整じゃない。インドと全く同じことをやっても超えられないからこそ、自分なりに考えてアレンジすることで、より美味しいものに挑なくちゃいけないと思うんです」

▲オールドデリーの屋台で売られている鶏。生と死の境界が近いインドらしい一枚。

しかし、根底にあるのはやっぱりインドなのだそう。「全く関係のないところではなくて、インドで見つけたものをヒントに料理を作りたい。毎年インドに通っているからこそ、そこは譲れない部分です」と山登さん。[ シバカリーワラ ]が東京屈指のインド料理店である理由がわかる気がした。お店で提供される料理は、山登さんが真摯にインドに向き合い、積み重ねたクリエイティブの結晶なのだ。

▲アスラムバターチキン(右)は骨つきタンドリーチキンに、ヨーグルトとバターの濃厚なソースがたっぷり。インドで食べるとバターの割合がかなり多いそうだ。ミーンバルタラチャ(左)は今回のインドで持ち帰ってきたレシピ。インターン先の賄い担当の女性から習得した、ローストスパイスを使用したフィッシュカレー。

  当記事はRiCE No.11「スパイスカレーの深層」の記事をWEBサイト用に再編集しています。 RiCE No.11の内容を見る。

シバカリーワラ 東京都世田谷区太子堂4-28-6 2F Tel 080-9432-8200 月曜定休 http://shivacurrywara.jp/ Text by Shunpei Narita

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