特集「朝食の時代」 #7
駒場の朝に溶け込むように。[LUNGO]ではじめる一日
RiCE.press編集部が、楽しい朝の時間を特集するシリーズ「朝食の時代」。
暮らすように旅をする、ではないけれど、非日常の中で、町の日常にまざって一日を始める。そんな朝を、たまには過ごしてみたい。そんな気分で向かったのは、駒場東大前。
渋谷から2駅という距離にありながら、周りを見渡せば高い建物がなく、車の喧騒もない。緑が多く、学生や教授、ファミリーが行き交い、どこかローカルな空気が漂う。地元の人から“都会の中の田舎”と呼ばれる、静かな朝の光がよく似合うこの街の一角に、2025年9月[LUNGO]がオープンした。
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手がけたのは、[TOKYO PASTA WORKS]のオーナーシェフ・淡島さん。2022年のオープン以来、パスタを通じて食の楽しさを伝えてきた。夜に本格的な手打ちパスタを提供する[TOKYO PASTA WORKS]とはまた違い、新店[LUNGO]では、朝8時から一日がはじまる。
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「朝から夜まで営業しているので、カフェみたいに気軽に入ってほしい。子ども連れでも、通勤途中でも、誰でも気軽に使える店にしたかったんです」
そうして生まれたのが、朝・昼・夜で表情を変える街のカフェのような存在。
[LUNGO]という名前には、「長い」というイタリア語の意味のほかに、「ゆっくりできる場所」というニュアンスが込められている。実際、朝はコーヒーを飲みに立ち寄る近所の人、昼は学生や会社員、夕方には家族連れの姿もある。
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朝の時間を切り盛りするのは、バリスタの馬場さん。[LUNGO]では深煎りのイタリアンローストを選んでいる。豆は近所のロースターから仕入れることもあれば、イタリアから取り寄せることも。
店の始まり方としては、少し意外かもしれない。 きっかけは「製麺所をつくりたい」というシンプルな思いつきだった。
「もともとは製麺所をやってみたくて場所を探していました。でも見つかった物件が思いの外広くて、もっといろんなことができると思って。スタッフも集まってきたメンバーがバリスタやバーテンダー、シェフと多彩だったので、みんなでできる形を探しました」
モーニングセットは「本日のスープと自家製パン」または「ブリオッシュトースト」の2種。取材の日のスープは、秋の野菜を使ったやさしいミネストローネ。ごろっと入った季節野菜に、自家製のショートパスタがよく合う。
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スープの中にパスタが入ると、それだけで少し特別に感じる。けれどイタリアでは、それがごく当たり前の光景だという。ショートパスタだけでなく、ロングパスタを折って加えることもある。そんな食文化に着想を得て、[LUNGO]でも自家製パスタを合わせた食べるスープも今後オンメニューしていく予定だ。
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もう一つのモーニングは、「水牛リコッタチーズと栗のはちみつをのせたブリオッシュトースト」。香ばしく焼いたブリオッシュに、やわらかな甘みが広がる。
ランチには、自家製のタリアテッレを使ったパスタランチを。夜になるとバーテンダーが立ち、カクテルやワインを片手に惣菜をつまめる。日中はショーケースから惣菜を選び、店内でも持ち帰りでも楽しめる。
粟島さん曰く、「ここは実験の場」だという。トライ&エラーを重ねながら、街のかたちに合わせて店を変えていく。もとは“製麺所”になるはずだった場所も少しずつ姿を変えながら、いまもアップデートの途中だ。
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自家製パンづくりにも力を入れ、[TOKYO PASTA WORKS]から続く粉の可能性を軸に、パスタだけでなく、パンや惣菜、スープ、コーヒーと食の幅を広げている。
「もしかしたら、数年後にはパン屋になってるかもしれません」と淡島さんは笑う。変わりつづけることを楽しむ姿勢が、この店の空気を軽くしているのかもしれない。
朝の光が差し込む店内で、エスプレッソをひと口。窓の外を眺めながら、街の呼吸に合わせてゆっくり一日が始まる。[LUNGO]の朝には、そんな豊かさが流れている。
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Lungo
東京都目黒区駒場2-1-3 苗場ビル2F(Google Maps)
8:00〜23:00 月曜日定休
IG @lungo_ognul
Photo by Shohei Hayashi(写真 林将平)IG @shohei_hayashi
Text by Sakurako Nozaki(文 野﨑櫻子)
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