シティライツ・レストラン

001 東京を朝から晩まで優しく包み込む、唯一無二の場所


Yuya UenumaYuya Uenuma  / Nov 7, 2023

はじめまして。旅館の企画・開発や運営をしている会社に勤め、約一年前に京都へ引っ越し、今は京都(8割)・東京(2割)のほぼ2拠点生活をしている28歳の上沼佑也と申します

仕事では、各地域が持つ文化を形にし表現する力が必要とされるもので、ふだん生活をしているなかで無意識的に、商いと土地性の関係を観察してしまいます。
長く生活をしていた東京を離れ約一年前に京都へ引っ越したことも大きな出来事で、東京とはまた違う文化を、生活を通して学んでいる最中です。

京都のランニングコース。大空の下で、山を望みながら水の傍を走るのは気持ちが良い。

フードカルチャーの中心地からは離れた所で仕事をしているのですが、休日は飲食店で働く友人や先輩と遊ぶこともあり、気づけば飲食コミュニティーにお邪魔している時間も多い人間です。それもあって大学時代の友人でもあるRiCE副編集長の成田くんと会えば、最近心に残った飲食店での体験や飲食店の最新情報などをシェアし、時には勝手ながらRiCEのコンテンツ(主にお酒関連)に対してアイディアを言い放っていることもあります。

ある日そんな彼とご飯を食べていた時、「RiCEWebで連載を書いてみてよ」という話になり、ライターでもなければ飲食事業者でもないのですが、食べ・飲みへ出かけることは大好きなので引き受けてみることにしました。
ただ、自分は何者でもない一般の会社員なので、連載を持つにあたり、どんな軸を据えて書き進めていくのかを整理してみました。

まず第一に、素人であるが故にできるフットワーク軽めで、自由気ままな内容にすること。

第二に、一消費者/生活者としての観点を用いた内容にすること。一人の独身男子の生活の延長線上にある景色を切り取ること。

そして最後に、観光業に携わっている以上、その土地の「光」を「観る」ような体験をした飲食店を紹介する、という点です。

この3つの軸を成田くんに話した時に「シティライツ・レストランだね」と彼の好きな本屋さんから引用して連載名を付けてもらったので、僕が暮らす京都とたまに東京+出張先で出会った、自分なりの「シティライツ・レストラン」を紹介していこうと思います。

連載のコンセプトを明文化してみたものの、結局美味しいものは美味しいし、好きな場所は好きである。この感情は言語化することが非常に難しい。いや言語化できないからこそ美しくもあると思います。
なので、自分の頭の中では上の3軸を並べつつも、あくまで自分の感情と感覚にできる限り耳を澄ませ、その土地に光を灯している好きなレストランを紹介していきたいと思います。

自己紹介の最後に、最近感動したシティライツ・レストランのワンシーンをちょっとだけ。
京都から東京へ帰ると必ず寄る飲食店が幾つかあるのですが、その一つが富ヶ谷の[フグレン]です。家でコーヒーを淹れるので、東京へ行けばフグレンでコーヒー豆を買って帰りたい、それも大きな理由です。しかし何はともあれ、コーヒーもカクテルも共に感動するくらい美味しい。

この日はオル→アヒルストア→フグレンという最高な流れでした。

7時から深夜1時まで営業できていることからもすべてのメニューのクオリティの高さがうかがえると思います。
きっと近所に住んでいれば、朝のランニング後にアイスアメリカーノを買って帰るでしょう。お昼を近くで食べる日には、食後にエアロプレスで淹れてもらったホットコーヒーを飲むし、夜は34軒目に行って〆としてネグローニを頼んだり…。どんな時間に行っても完璧なお店は、そう多くないと思います。

ただ今回改めて紹介したいと感じたのは、「どの時間に行っても美味しいから」という理由だけではありません。スタッフの皆さんのサービスが見とれるくらい素晴らしいからです。

最近の[フグレン]には海外の方も多く来ており、たとえば「テイクアウトカップでの店内利用を控えてください」と文字と言葉で伝えていても、伝わっていない場面も多く見かけます。住む場所も違えば文化も違うので、うまく並べない方もいるし、歩行者を気にかけず写真撮影に夢中な人だっています。それでもって常に混んでいる。そんな中で日々働いているにも関わらず、スタッフの皆さんは常に笑顔でとても丁寧。このプロフェッショナリズムに心打たれるのです。
ルールを理解していない人や周りに迷惑をかけてしまっている人には、躊躇せず爽やかに声をかける。嫌な思いをさせないよう細心の気遣いをしながら、締めるところはきっちり締める…。こんな場面に来るたび来るたび出会うのです。京都へ移住し、東京を一歩離れた僕は、日本で最も多様性に溢れカオスな場所である東京を、朝から晩まで優しく包み込む唯一無二の場所だ!と感動すら覚えます。

そんな僕の中でのTokyoの土地性を感じたシティライティングな体験と、フグレンの皆さんの分け隔てない素敵なサービスが大好きだという想いを添えて、初回の記事を終わりにしたいと思います。次の記事は京都の飲食店にしようかな。

(Edit by Shunpei Narita)
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