
夏の日帰り電車旅
[BROWNSEA FLOWER SHOP]のくまけんさんと巡る、山梨 甲府〜韮崎編
美味しいものがすぐそばにあって、楽しい時間に満ちた場所、ここ東京。遠出せずとも足りないものはない気がしているけれど、たまに、“いつもの”ではない景色を見たい日がある。
美味しい時間はもちろん、豊かな緑や自然を求めて山梨県の甲府・韮崎へ。どこにも切れ目がないような忙しない日々の中で、生き返るような一日旅行をしよう。電車に揺られて辿り着いたその場所には、目指したいお店があって、会いたい人がいて、こことは違う時間が流れていた。
旅の案内人・くまけんさんと合流
早朝、JR新宿駅から予約していた特急あずさに乗る。7時半台の電車に乗り1時間40分ほどゆったり揺られて、JR甲府駅に着いた。

「ようこそ!」と爽やかに迎えてくれたのは、山梨・甲府を拠点とする花屋[BROWNSEA FLOWER SHOP]を営むフローリストの熊木健二さん(愛称、くまけんさん)。ブーケをはじめとするフラワーギフトや植物を用いた空間装飾、庭づくり、アーティストのアートワークやライブの装飾のほか、柔らかな線で絵を描きまっすぐな文章も書く、くまけんさんの才には枚挙にいとまがない。
3~4年前に甲府に移住したくまけんさん。はじめましての挨拶もそこそこに、さっそく1軒目に案内してくれることになった。じわじわと暑くなってきていた7月下旬。山梨でも蝉が鳴き、汗が流れる。喉が渇いた。
甲府駅から徒歩5分の[AKITO COFFEE]へ

「友だちとはいつもここで待ち合せます。コーヒー飲みながら喋って、『じゃ、またね』ってサクッと解散することもあるし。県外から友だちが来て、『今、AKITO COFFEEにいるんだけど会えない?』と連絡があって集合したり。スタッフの子とも話すし、ここに来たら誰かに会える、そんな場所ですね」

くまけんさんの言葉通り、誰でも入りやすいまちのコーヒーショップ。全国各地のポップアップや出店で、はたまたお土産をもらってなど、一度は[AKITO COFFEE]の名前を聞いたことがあるはず。

スタッフさんの声かけはとても心地よく、多くの人のサードプレイスであることがよくわかる。1階でコーヒーと焼き菓子(好みでアイスをトッピングできる!)をオーダーして、カウンターや2階席で食べることができる。コールドブリューのボトルとサンドイッチや焼き菓子をテイクアウトし、ドライブやピクニックで楽しむのもおすすめだ。
ブルーベリーがごろっと入ったケーキや、生地がざくざくのバナナガレットが魅力的
「山梨は今各地で新しいお店ができていて、巡るのはすごく楽しいと思います。北杜や富士吉田エリアはすごく人気。甲府は昔ながらのお店が多くて、中でもやっぱり『街』です。場所によってカラーが違うからそれぞれの特徴も楽しんでみてください」とオーナーの丹澤亜希斗さん。
朝から美味しいコーヒーと焼き菓子をいただいて心も体もしゃきっと整った。しっかりお腹が空いてきたので、タクシーに乗り込んで次の目的地[EATS IN SPACE]へ。
[EATS IN SPACE]のカレーで腹ごしらえ

初詣の時期はお客さんでぎゅうぎゅうになるという武田神社を通り越し、[AKITO COFFEE]から10分ほど揺られてかわいらしい一軒家に辿り着いた。

「こんにちは!」と迎え入れてくれたオーナーの与那覇 至(よなは いたる)さん夫婦。親しげに挨拶を交わす、至さんとくまけんさん。
広い店内をぐるりと見渡すと、木のぬくもりを感じる内装で、大きな窓からは柔らかい光が入り、赤いチェックのカーテンがきらきらと透けている。販売しているオリジナルのバッグやてぬぐい、青いタイル張りのキッチンカウンターや味のある家具など、散りばめられたキュートなアイテムたちが、楽しげで気持ちのいい空間を作り出す。

[EATS IN SPACE]といえばカレーだ。今日のカレーは「山椒のチキンキーマ」で、さっきからスパイスのいい香りがしている。くまけんさんが「いつもセットで頼むのはこれ」とアイスアメリカ―ノを注文した。
カレーとドリンクのほかにも、パンケーキやビスケット、ティラミスなどのデザートまで美味しい
「二人とは本当に仲が良くて、実は昨日も会ったばかりなんです。自宅からも近いし、友だちの家に遊びにいくような感じで、いつもふらっと自転車で顔を出しています。スパイスを使った料理が大好きで。あー、このキーマ、今日もすごく美味しい!」


富士山の麓で至さん自ら採ってきたという山椒がたっぷり入ったキーマは、爽やかな刺激がもうひと口を誘う。添えられた副菜はどれも野菜の味がしっかり濃く、山椒やハーブ、スパイスの香りが重なって奥行きのある味わいだ。「このキャベツは近所の農家のおじちゃんたちが作ってくれたものです」と至さん。

食後は庭に移動して、読書をはじめるくまけんさん。周囲は家や畑に囲まれていてとても静かだ。近くをつばめが飛んでいるのでよく見ると、店の外壁にいくつか巣があった。毎年巣をつくりにきては、ここから飛び立っていくという。ゆっくりしたら、次は韮崎に移動してみよう。
つばめのヒナ
ぶどう畑の[PANG HOUSE]
JR甲府駅から韮崎駅までは電車で15分。道中の車窓に注目して、まちの様子ときれいな景色をぜひ見てほしい。ワクワクしながら韮崎駅のホームに降り立つと、富士山がくっきり見えた。甲府よりのんびりした時間が流れているような気がする。
ホームは山に囲まれている。反対側に富士山が見える
タクシーに乗って10分ほど走ると、ぶどう畑に囲まれた家具屋さん[PANG HOUSE]に着いた。


扉を開けると、オーナーのパン・コーリーさんと理恵さんが「久しぶり~」と迎お出迎え。2022年に韮崎に移住した夫婦は、築150年の古民家を自分たちの手で改装して家族で住み、住居の横には店舗兼工房を開いている。

理恵さんがお店に立ち、パンさんが手がけたハンドメイドの家具や木工製品、仕入れたファブリックやうつわなどの雑貨を販売している。パンさんはちょうど、工房に入りきらない大型の什器を店先でつくっている最中だった。

[PANG HOUSE]の店長であるイトちゃんは人懐っこい。暑い中で作業するコーリーさんを見守るようにすぐそばで
店内にはデザイン家具だけでなく、国内外の作家や職人がつくる生活雑貨も並んでいる。種類はさまざまで、理恵さんがパリで買いつけた小物や、フレグランスやアクセサリー、お茶までも。実用的な雑貨はもちろんだが、不思議な生きものをモチーフにしたぬいぐるみや焼きものなど、ユーモラスなアイテムもある。大中小さまざまの、心がときめくものが揃っている。コーリーさんの出身地・マレーシアにゆかりのあるグッズもあり、国際色豊かなラインナップだ。

「ここに来たらつい何か買ってしまいます。昔ここで買ったもので、今も僕の家にもあるものもいくつかありますね(笑) クラフトビールやコーヒーを店内で飲むこともできるので、雑貨を見ながらひと休みもできます。僕はいつか、コーリーに家具をオーダーするのが夢なんです」とくまけんさん。
[PANG HOUSE]でちょっとした素敵な雑貨をお土産にしよう。
日本ではなじみのある豆椅子のアップサイクルしたキッズチェア(右端)。つるりとした肌が美しい木の家具が並んでいる
[DAUGHTER]から[URAKURA]で〆る
だんだん美味しいものが食べたくなる時間になった。再びタクシーに乗り込んで韮崎駅まで戻り、カフェ[DAUGHTER]に向かう。駅から[DAUGHTER]までの道すがら、飲み屋街や本屋、カフェやコーヒーショップなど魅力的な店が並んでいるので時間があれば立ち寄りたい。

どこか異国感のある[DAUGHTER]の空間。店内に入るとまず目に入るのは、ずらりと並んだ焼きたてのパンと焼き菓子たち。「スペルトハニーオーツブレッド」「サワードゥブレッド」や、定番のバナナブレッドやキャロットケーキ、数種類のビスケット、パウンドケーキから甘い香りが立ちのぼる。小麦好きには圧巻の景色だが、一部グルテンフリーや卵や乳製品を使用していないお菓子もあるようだ。

表には出ていないアイスサンドやジャムサンド、ドーナツ、グラノーラも人気のラインナップ。お土産用にパンやお菓子を購入して、店内では本日のデリプレートをいただくことに。大きな窓から陽がさし込む、明るい席を用意してもらった。
その日入った野菜によって内容が変わる野菜が主役のデリプレート。くまけんさんはフムスがお気に入り
「ここは特等席ですね! あ、あの椅子はさっき訪れた[PANG HOUSE]のコーリーがつくったものだ。みんな仲良しなんです。[DAUGHTER]では何を食べても間違いないのですが、おすすめはデリプレートです。地元の野菜がたっぷりで色鮮やかで嬉しい。添えてあるパンも本当に美味しいです! [DAUGHTER]のパンとお菓子をお土産に持って帰ると、すごく喜んでもらえます」
店内の植物はくまけんさんが手がけることもある
オーナーの山邊知佑さんの実家は埼玉の浦和にあるベーカリー[イエローナイフ]。[DAUGHTER]にはさまざまなメニューがあるが、サワードゥをはじめとするパンは主力の一つだ。次来るときは自家製のパンでつくるサンドイッチやスープセットもいただいてみたい。
帰りの電車の時間が迫ってきた。居心地のよさからつい長居したくなる気持ちを抑えて、最後の店[URAKURA]まで歩く。お店は[DAUGHTER]の目と鼻の先にある洋菓子屋の横の通路を通った先にある。

[URAKURA]は昔ながらの蔵を改装した角打ちできる酒屋だ。クラフトビールを中心に、ワインやシードルが用意されており、ノンアルの用意もある。冷蔵ケースから気になるものを選び一杯やって、旅の締めくくりとしよう。

選んだのは山梨のワイナリー[共栄堂]のオーナーがつくっているというコシヒカリを加えた「ライスラガー」。お米由来の柔らかさもありつつ、シャープな飲み口が暑さで乾いた身体に沁みる
「僕ははじめてお邪魔したんですが、蔵の面影が残っていて落ち着きますね。こういう空間で、相撲のテレビ中継が流れているのもいい。次はぜひゆっくり飲みたいなあ(笑)」
[URAKURA]から徒歩で韮崎駅に戻る。まだまだ夜がはじまったばかりで帰るのは名残惜しいが、健全な日帰り旅として満点の満足感だ。今回は訪れることができなかったが、くまけんさんがデイリーに通っているというとんかつの[とん甲]やそばと名物の鳥もつ煮の[奥藤]でさっと晩ご飯をいただいてから、電車に飛び乗るのもいいだろう。

次は泊まりで、甲府と韮崎だけではない、未体験の山梨に足をのばしてみたい。
[EATS IN SPACE]の庭風景
[AKITO COFFEE]
甲府市武⽥1-1-13
9:00~17:00(土日祝は9:00~18:00)
定休日なし
IG: @akitocoffee[EATS IN SPACE]
甲府市古府中町2887
9:00~16:00
木・金定休
IG: @eatsinspace[PANG HOUSE]
韮崎市穂坂町三ツ澤2149
12:00~16:00(日曜は13:00~16:00)
不定休
IG: @panghouse_furniture[DAUGHTER]
韮崎市本町2-9-25
11:00~16:00(lunch 12:00~)
土・日定休
IG: @daughter.cafe[URAKURA]
韮崎市本町2-10-8
13:00~20:00
不定休
IG: @kakuuchi_urakuraPhoto by Mishio Wada(写真 和田美潮)IG: @mso_304
Text by Nanako Aoki(文 青木南凪子) IG: @a7.0o
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ブルーベリーがごろっと入ったケーキや、生地がざくざくのバナナガレットが魅力的

ホームは山に囲まれている。反対側に富士山が見える
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選んだのは山梨のワイナリー[共栄堂]のオーナーがつくっているというコシヒカリを加えた「ライスラガー」。お米由来の柔らかさもありつつ、シャープな飲み口が暑さで乾いた身体に沁みる

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