ライス・シーズナル・レターズ
甘すぎないバレンタイン、野菜マフィン|[doyoubi] 瀬谷薫子
バレンタインは甘党だけのものじゃない!
2月14日まであと一週間。たった一粒のチョコで好きと伝えられる甘い日はもうすぐそこだ。言葉にならない気持ちが束になって世間の温度もぐんぐん上がって、ねっとり生チョコやしっとりガトーショコラが似合いそう。だけど、今年はちょっと、甘くないバレンタインの気分かも。甘いものよりしょっぱめ好きのあの人と、美味しいバレンタインを楽しみたい。
そんな大人に甘すぎないレシピを教えてくれる人が、[doyoubi]の屋号でマフィンを作る、編集者の瀬谷薫子さん。惚れこんだ生産者さんから届けてもらう野菜でつくるのは、旬の野菜の食感や風味が主役のしょっぱいマフィン。基本の生地に加える砂糖の量は、一般的なマフィンと比べてだいぶ少なく健康的で、胃にもたれず食べられる。

店は鎌倉駅から徒歩15分の静かな住宅街の中にある。鎌倉の夜を楽しんだ呑兵衛たちが、酔い覚ましの散歩がてら朝ごはんに買っていくこともあるそうだ
野菜がじゅうぶんに甘いから普段は副材料にチョコレートは使わないものの、バレンタイン特別仕様で、ホワイトチョコをアクセントにした野菜マフィンを教えてもらった。ほっくりした里芋と香ばしい焦がしねぎ、甘味噌を生地で包み込むように焼き上げたマフィンは、なるほどお酒に合いそうだ。味噌の種類を変えたりスパイスを加えたりと、自由にアレンジもできる。
渡したい人の顔がほころぶ瞬間を思い浮かべて組み立てる、おおらかなマフィン。作り方は簡単で、とくべつな技術も道具も食材も必要ない。具材を準備して、粉と混ぜて、焼き上げるだけ。美味しくつくるためのポイントをおさえながらレッツトライ!
マフィン
里芋と焦がしねぎ 白味噌 ホワイトチョコ
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材料(マフィン型6個分)
里芋…中3個(小5〜6個)
長ねぎ…1/2本(粗みじん切り)
ホワイトチョコレート(市販の板チョコレート)…60g(細かく刻む)
A(合わせてふるっておく)
薄力粉…280g
砂糖…30g
ベーキングパウダー…10g
B(混ぜておく)
米油…90g
豆乳…240ml
塩…2g
C(混ぜ、600wの電子レンジで40秒ほど、砂糖が溶けるまで加熱する)
白味噌…120g
砂糖、みりん、酢…大さじ1
塩…小さじ1/2
作り方
①里芋は蒸し(または電子レンジで加熱し)、竹串が通るまでやわらかくする。粗熱がとれたら皮をむき、つぶす。塩、砂糖少々(分量外)をまぶして下味をつける。
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里芋のごろっと感を楽しみたいときはつぶしすぎないように。生地に混ぜ込む各野菜は、塩や砂糖で少し下味をつけておくと、仕上がりの塩味のあんばいがちょうどよくなる
②長ねぎは米油大さじ1/2(分量外)を熱したフライパンでこんがり炒め、塩少々(分量外)をふる。

「長ねぎの青い部分の繊細なハーブのような風味が大事なので、上の青い部分を始点として1/2本を粗みじん切りにしてください」と瀬谷さん。ねぎの代わりに、白ごまや刻んだ紫蘇を入れてもいいアクセントになる
③Bのボウル(米油・豆乳・塩を混ぜたもの)に、①の里芋と②の長ねぎを加えて混ぜる。マフィンの上にトッピングする場合は、里芋と長ねぎを少し取り分けておく。
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④Aの粉類に③を加え、粉気がなくなるまでゴムベラで混ぜる。
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粘り気が出ないようにさっくりと。右手にゴムベラを持ち、左手でボウルを回転させながら混ぜると均一に混ぜられる
⑤マフィン型にカップを敷き、カップの底面が隠れるように④の生地をスプーン1杯分いれる。Cの練った甘味噌とホワイトチョコを適量ずつ入れ(マフィンの上にトッピングする場合は、少し取り分けておく)、具材を包むこむように生地でふたをする。190℃に予熱したオーブンで25分〜焼く。
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最初に入れる生地は底面が完全に隠れるように入れることで、具材が底に当たって焦げるのを防ぐ
⑥生地に竹串を刺して火が通っていたら、仕上げにトッピング用の甘味噌、ホワイトチョコ、里芋、ねぎをのせて追加で2〜3分間焼く。トッピングの端に焼き目がついたら完成。

粗熱がとれた頃が美味しいが、翌日以降に食べる場合はトースターで温めなおすとカリッと感が復活する
いい音がするアレンジ
焼き上がったマフィンを少し冷まして、手で触れるくらいの熱さになったら食べ頃。手で割って頬張ると、焦がしねぎの香ばしさとコク、甘味噌とホワイトチョコのあまじょっぱい味が口いっぱいに広がる。具材それぞれの食感や風味は絶妙に立っているのに、甘味噌が生地と具材をつないで一体感がある。こんなに簡単なのに、こんなに完成度が高いなんて。
「お酒を呼ぶマフィンでしょ?(笑) あまり甘いものを好んで食べないのもあるんですけど、私のマフィンはお酒に合うんです。これは焼酎との相性が抜群ですよ。もっと中華に寄せて生地に花椒や豆鼓などのスパイスを入れてもいいし、方向性を変えてクミンやコリアンダーもワインに合いそうですね。もちろん、もっと甘みをきかせたいならホワイトチョコの量を増やしても。好きな味をイメージしながら、自由に組み合わせてみてください」
今回は白味噌を使ったが、うちにある赤味噌や米味噌に代えても、数種類を好みでブレンドするのもおすすめ。トッピングやアクセントだけでなく、マフィンの主役である野菜を変えてもいいのだ。基本のマフィン生地は、どんな主役も脇役もどっしりと受け止めてくれる。
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自宅用ならマフィン一つひとつの生地量を計らず、おおらかな気持ちでつくっても大丈夫。ぽってりとした姿がなんとも愛おしいマフィンたちは、割れかたも膨らみかたも表情はみんなそれぞれだ。「自分でつくってるんですけど、焼き上がりにはいつも可愛いなぁって思います」
アレンジするときにおすすめなのが、言葉の響きで組み合わせを決める方法。
「食材の名前を組み合わせたときに、心地よい響きがあるかどうかで決めますね。言葉にはすでに味や食感や香りのイメージが紐づいているじゃないですか。言葉を発したり書き出したりときに自然にしっくりくるなら、それはきっとぴったりの組み合わせなんです」
瀬谷さんが今度つくろうとしているのが「焼き大根」と「梅酒」のマフィンだそう。冬の甘い大根のジュワッとした甘みと焼いた香ばしさに、梅酒のさわやかな酸味が合わさって、食べていないのに美味しい気がしてくる。「里芋と焦がしねぎ 白味噌 ホワイトチョコ」の約束されたマッチングを楽しんだあとは、言葉遊びのようにいろいろとアレンジしてみたい。
瀬谷さんのマフィンは、旬を落とし込んだ気負わない日常のマフィン。バレンタインが終わったあとも、季節の楽しみとしてつくり続けるのもいいかもしれない。
doyoubi
神奈川県鎌倉市小町3-10-13
営業日はIGから @doyoubi_muffinPhoto by Misa Shimazu(写真 島津美紗)IG @smzms_620
Text by Nanako Aoki(文 青木南凪子)
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