
連載「一年住んだらコスタリカ人になれるか」#3
『今度うちにおいで』を逃さない
朝起きて玄関をでると、すぐに標高1,500mからの絶景を見渡せる。

エレディアでの一か月がおわり、ついにコーヒー栽培が盛んな、タラス地区「サンマルコス」での一人暮らしが始まった。
コーヒーを学びにコスタリカに来た。学ぶといっても栽培方法とかではなくて、どんな人がどんな思いでコーヒーを作っているのか、その過程を追いかけに来たという方が正しいかもしれない。
日本でも、気になる農家さんを見つけては、よく畑仕事をさせてもらっていた。その野菜で料理をするときは少し誇らしく、心が満たされ、ご飯を食べるときも自然にわくわくする。

もう6年くらいの付き合いになる千葉県館山市の[安西農園]さんと。
調べるだけでなく、身体を動かし、その過程を焦らずゆっくり知ることで、人生が何倍にもおもしろくなる。そのことを最初に気づかせてくれたのが、コーヒー。
だから、今回またここに戻ってきた。
コスタリカでの生活が3か月目に入り、いくつかの農園や精製所をまわらせてもらっている。10月から始まるコーヒーチェリーの収穫までは、いわゆる閑散期なので、逆に言えば今のうちにじっくり見ておける。
こちらは6年前にここで友達になったリカルドの農園と精製所。


写真でもわかるように、コーヒーの木の間には、「シェードツリー」と呼ばれる役割の木がある。コーヒーに適した日照量に調整できたり、強風から守ったり、その落ち葉が肥料になったりと、さまざまなメリットがある。コスタリカで一般的に植えられているのは、バナナやプランテン(調理用バナナ)で、ぼくは最初この違いが分からず、プランテンをヨーグルトに入れていたら、ものすごい顔でリアクションをされたことがある(笑)。

プランテン(左下)。大きくて皮は硬く、包丁でむく。
リカルドの家に一泊させてもらうことになり、夜ごはんをいただいた。

フライドチキン、カネロニパスタ、プランテン
「これは農園で採れたプランテン(左下)だよ」と、リカルドパパが教えてくれた。
なるほど。ちゃんと食べれるのか。一体シェードツリーは一石何鳥なんだよ。と思いながら、コーヒー栽培と食の関係性を垣間見た。
お次は、[ラ・リア精製所]を運営するオスカルさんのもとをたずねた。
オスカルさんも、自分が大学生だった6年前に出会っていて、今回も快く受け入れてくれた。毎年トップクラスの豆を世界中に届けているレジェンド的な生産者だけど、相変わらず謙虚で優しい方でした。

標高1,900mに位置するピエサン農園

農園主のオスカルさん

まだ熟していないコーヒーチェリー
「リア」という名前は、オスカルさんのお母さんの愛称で、今回はじめてお会いすることができた。コスタリカの家族愛は半端ないのだ。
着いてすぐ、お母さんにchorreadas(チョレアダス)という、フレッシュのとうもろこしを生地に練りこんだ焼菓子を作っていただいた。natilla(ナティージャ)という、コスタリカ版サワークリームにつけて食べる。

これが絶品すぎた。50分ほど山道を歩いてきた身体に、とてつもなく染みわたる。なんと、とうもろこしも自家栽培だという。オスカルさんに、思い出をきいてみた。
”子供の頃から、chorreadasを食べて育ちました。毎年、最初の雨が降る頃にトウモロコシを植えてましたね。料理上手だった祖母の家の薪ストーブのそばで、彼女がnatillaをつける様子を眺めていたことを、今でもよく覚えています。あの香りが大好きで、食べた後は、すぐにいとこ達と遊びに出かけてましたよ。”
自分の中で、とてもシンプルなところに辿り着いた。
その土地の食を知ることは、その人たちの日常や生い立ちを知ること。
そして、この場所でいうと必ずコーヒーの話がついてくる、ということ。
まだこの町で、コーヒー農園に関わりのない人を見かけていない。小さい頃から農園をかけまわり、たとえ今栽培をしていなくても、親戚や仲の良い友人から直接コーヒーを買っていたりする。そのくらい生活と密接に結びついている。

農園に行くと、こんな感じでよくお家で過ごさせてもらう。
ご飯をごちそうになったり、昔の写真をみせてもらえたり、何やらユニークな置物があったり。その貴重な機会を逃すべきではないなと思った。
それから、「今度うちにおいで」と言われると、それを大真面目に受け取り、自分のコーヒー道具を持ってお邪魔するように。
先日は、Facebookでつながったアンドレスさんのお宅にお邪魔した。アンドレスさんは、熊本に留学していたこともあって、すぐに打ち解けることができた。
「毎週日曜日に、家族でご飯を食べるんだけど、こない?今週ぼくのターンなんだよね」
聞くと、ご飯をつくる担当が、週がわりで家族毎にまわってくるらしい。
その日は15人も集まり、エレディアの大学に通う子も、この日のために3時間かけて戻ってきていた。


食後のおやつ。生地の中にはたくさんのチーズが。
そのお家はまるで博物館のようで、たくさんの物で溢れていた。
そのうちの一つを紹介したい。

かぼちゃやヘチマでつくる、calabazaという楽器なのだが、おばあちゃんが「昔はコーヒーを収穫する時に、水分補給のボトルとしても使っていた」と教えてくれた。うん。また、コーヒーの話に出会えた。
ぼくのコーヒーの過程を追いかける旅、その「過程」に迫る切り口が、まぎれもなく「食」や「生活」にあると気づいたお話でした。

- Coffee Traveler
佐々木 奎太 / Keita Sasaki
1997年、福島生まれ仙台育ち。大学時代、コーヒーの奥深さや、それを取り巻く環境すべてに興味を持ち始め、中南米諸国のコーヒー農園を巡る。その後、コーヒーの焙煎や大会出場の経験を生かし、フリーランスとしてコーヒーの出店をはじめる。2022年より、株式会社The Youthが運営する六本木[Common]にて店舗マネージャーを4年ほど務めた後、2026年5月より再びコスタリカへ。
IG:@tamakei9
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