vol.2 坂本里菜

食の学び舎「foodskole」授業体験レポート


Satoshi HiraiSatoshi Hirai  / Jun 7, 2021

まずはじめに。

こんにちは。食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」で校長をしています平井巧です。

foodskoleでは、2021年4月から「21年度前期Basicカリキュラム」がスタート。社会人から大学生、年齢も立場もバラバラな方たちが、9月までの半年間、全12回の授業を通して一緒に食について学び合います。

食を文化として学び、食にまつわるモノ・概念を持論で創造し、生きる力を持つ。これを「食の創造論」として、foodskoleのテーマに置いています。

foodskoleの授業の中で、ゲスト講師に教えてもらったこと、受講生のみんなで話し合われたこと、気づかされた視点は毎回たくさんあります。これをレポートとして形に残すことは、後々の振り返りとしてきっと役立つはず。

何よりfoodskoleの中にいる自分たちだけでなく、食のことが好きなたくさんの人たちに、このことをおしみなく共有したい。そんなことを思いましたので、いま受講している方に、授業の「体験レポート」を書いてもらうことにしました。

foodskoleで学ぶ自分たちがそうであるように、これを読まれた方たちにも、「食」の向き合い方に良い変容が起きることを期待して。これからこの授業体験レポートをお届けしていきたいと思います。

foodskole 公式サイトは、こちらをご覧ください。

第2回目の授業は、「発酵でつなぐ都市と地域。」をテーマに、株式会社ファーメンステーション代表の酒井里奈さんをゲスト講師にお招きしました。

株式会社ファーメンステーション代表取締役。大学卒業後、都市銀行、外資系証券会社などに勤務。発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学。20093月卒業。同年、株式会社ファーメンステーション設立。研究テーマは地産地消型エタノール製造、未利用資源の有効活用技術の開発。第1Japan BeautyTech Awards特別賞、EY Winning Women 2019 ファイナリスト、ブリティッシュ・ビジネス・アワード(BBA2014 Community Contribution 等を受賞。

今回の体験レポート担当は、foodskole生の坂本里菜さんです。
(foodskole校長/平井巧)

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商品が「サステナブルであること」は、消費者に選ばれる理由になるのか? 日常の買い物に選択が生まれることの意味を考えます。

はじめまして。フードスコーレ受講生の坂本里菜です。昨年の3月に法政大学経営学部経営学科を卒業し、現在は社会人2年目となります。

フードスコーレの校長先生である平井巧さんには、大学時代のゼミで行われた「フードロス」について考えるイベントにて大変お世話になりました。

私は昨年の7月から1人暮らしを始め、料理をするようになり、予想外に余ってしまう食材に頭を悩ませていました。また、これまで以上に健康と「食」の結びつきについて考える機会が増えました。

日々思い悩む中で、フードスコーレのみなさんと「食」について意見を共有し、自分なりに納得のいく考え方を持てるようになりたいと思ったのが受講の決め手です。

フードスコーレ第2回目の授業は、株式会社ファーメンステーションの代表である、酒井里奈さんによる「発酵でつなぐ都市と地域」というテーマで行われました。

酒井さんは「発酵技術を使って循環型社会を作りたい」という想いから、現在の会社を立ち上げ、有効活用されていない資源を発酵によってアルコールに再生させています。

社名であるファーメンステーションとは、Fermentation (発酵)とStation(駅)の造語です。「ファーメンステーションを通過することで、前よりいいことが起こるように」との願いが込められているそうです。

不要になってしまったものやゴミと言われるようなもの、そういった未利用資源を再生させて循環させることを目指して4つの事業を展開されています。

①本格的なオーガニックブランド
サステナブルエタノールの良さを伝えたい想いから、自社のオーガニックブランドを持ち、商品化することで、消費者の手元へ届ける事業。

②原料販売
オーガニックやサステナブルな商品を作りたい事業主に原料を売る事業。

③OEM/ODM
委託者のブランドで、お米でできた高濃度アルコールスプレーを開発。いろんな皆さんと組んで未利用資源を活用するのが当たり前の社会を作りたい想いから始めた事業。

④企業コラボレーション
シードルを作る過程で出てしまった「りんごの搾りかす」を発酵させ、アルコールをつくり、ウエットティッシュへと製品化することに成功。高い技術力でゴミと呼ばれているものをよりよいものにしている事業。

使われなかったりんごカスは家畜の良い餌となるため、ゴミはゼロ。良い餌を食べた家畜は良いお肉に育ちます。良い糞は良い堆肥となり、良い循環が生まれているのです。

 

他にも、雑穀のヒエの糠を化粧品の原料にしたり、廃棄バナナでエタノールを製造し、ウエットティッシュにしたりと様々な取り組みを教えていただきました。

これまで酒井さんがサステナブルな取り組みを行う中で、周囲から「効率が良くない」と言われたことも多くあったそう。それでも12年間この4つの事業を続けてきた「循環型社会への強い想い」を聞くことができました。

「無駄って思われているものをめちゃくちゃ価値のあるものに変身させたい。」酒井さんはこうおっしゃっていました。そうした理念そのものがまさにエコシステムだと感じました。

今回の授業における共通課題

今回の授業では、「『サステナブルな消費』と向き合ってみてモヤモヤする。」ことがゴールでした。そのため、授業前にそれぞれの受講生が「サステナブルな消費って何だろう?」という共通課題について考え、チャットにて意見交換をする宿題がありました。

すぐに答えの出ない問いに取り組み、自分と違う考えをたくさん聞くことで、「私にとっての持続可能な消費」に向き合う機会になりました。

酒井さんにとって、サステナブルな消費とは?

「狭い意味で言うと、原料を作っている過程で環境負荷ができるだけ低い製法でできているものを選ぶこと。」

「広い意味でいうと、作っている人を応援したくなる、共感したくなるようなものを選ぶというアクションのこと。買うとか使うとかいう行為は社会参加だと思っているから。」

酒井さんの言葉から、正解のない問いについて考えるときは、たくさんの自分と違う考えを聞いてモヤモヤと問いに向き合い続けることが大切だと感じました。

私にとって、サステナブルな消費ってなんだろう?

酒井さんの考える「サステナブルな消費」という一意見をお聞きした上で、再度私にとってサステナブルな消費とはなんだろうとモヤモヤし続けました。

私はこれまでの買い物で、取り組みを応援したいと思って買った物は数えられる程度しかありませんでした。サステナブルについて日常ではほとんど考えられていなかったため、自分の利益ばかりを考え、買い物をしていたように思います。

この講義を聞くまでは、サステナブルな消費と聞いて、私は「大切にものを使い続けることや無駄なく食品を使うこと」が思い浮かびました。

しかしこの講義を聞いた後に考え続けた結果、「日常の買い物の中で、使うものの原料を気にしてみることや、製造の中でサステナブルな取り組みをしているかどうか考えて使うこと」なのではないかと思いました。

「大切に」や「無駄なく」といった我慢を伴う精神的なことではなく、少しだけでもいいから日常の中で原料や生産過程を意識して買い物をしてみたいと思えたのです。

ただ欲しいものを自身の利益のみで消費していくのではなく、生産者に想いを馳せたり、消費の後の循環を想像したりすることがサステナブルな消費になるのではないかと考えます。

サステナブル商品の原材料と価格

例えば、私たちがこのコロナ渦で日常的に使用している消毒用のアルコール。毎日何回も使っているにも関わらず、どんな成分でできているか、どんなところで作られているのか、私はこれまで一度も気にしたことがありませんでした。

現在主に流通しているアルコールの原材料は、石油由来のものと発酵由来のものがあるそうです。発酵由来のものは、キャッサバ・サトウキビ・トウモロコシなど大量に収穫することによって手頃な価格にすることができた原材料を使用しているといいます。

一方で、ファーメンステーションのサステナブルアルコールは、同じく発酵由来のものですが、大量生産ではなく、1つひとつ丁寧に高い技術力で未利用資源をアルコールにしているため、当然価格は高くなってしまいます。

大量生産・大量消費によって安定供給されたアルコールを私たちは毎日便利に使っています。こういったことをこの講義日まで全く知りませんでした。

ファーメンステーションのサステナブルアルコールは、手頃な価格で安定供給されている市場に出ていくことになります。

「サステナブルであること」は消費者にとって選ばれる理由になるのか?

そうなったときに果たしてどれだけの人がサステナブルアルコールを買うことができるのでしょうか。これまでの私でしたら、何の疑いもなく、価格に目を奪われ、世に流通しており、手頃な価格でどこでも買える便利なアルコールを使っていたと思います。

しかしお話を伺うと、その過程で大切にされている理念そのものに価格以上の価値があるのではないかと思いました。サステナブルな取り組み自体が、世に流通しているものと違う価値を見出していると感じたのです。

これまでは価格に捉われて買い物をしていましたが、ファーメンステーションの取り組みを応援したいと思いました。そしてサステナブルアルコールを実際に購入するワンアクションを起こすに至りました。

リンゴの搾りかすや、ゆずの皮、規格外で廃棄されるはずだったバナナ、休耕田を再利用してできたお米、そうした未利用資源を発酵させてできたアルコールがどんなものなのか興味が沸いたのです。

サステナブルな取り組みを応援したい、こうした感情が生まれましたが、これは取り組みを「知る」ことによって生まれた変化だと思います。

受講生の中から、「取り組みを応援するという買い物は、既に今生活に困っていない、ある程度金銭的な余裕がある元で成り立っている」という意見がありました。そういった新たな課題があることも、きちんと頭に入れておかなくてはならないと感じます。

そして私自身も、毎回の買い物で取り組みを応援する買い物をできるわけではありません。その都度折り合いをつけながら、自分の納得のいく範囲で、「選択できるようになること」や「サステナブルな消費を考え続けること」が大切なのではないかと考えました。

私が「なぜファーメンステーションの商品の価格が高くなってしまうのか?」という質問を酒井さんにした際、

「たしかに原材料が未利用資源のため、原価が安いように思われるかもしれない。けれども、大量生産・大量消費による商品と比較すると、未利用資源を発酵させる高い技術や生産過程や販売過程や人件費など、原価以外の全ての工程でお金がかかる。」

と教えてくださりました。さらにそのあとに続けて、

「既存のアルコールと価格競争すること自体が間違っていると思う。環境負荷が価格に反映する時代ももしかしたらこれからくるかもしれない。価格が高いからという理由だけで、事業を諦めずに根気比べで粘ってやると思う気持ちでやっている」

とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

大量消費とサステナブルな消費

市場に出回る価格内で作らなければ売れないメカニズムがたしかに世の中にはあります。大量生産・大量消費によって、安価で便利で効率的なものを求めるようになった世の中です。もちろんそうした恩恵も日々私たちは受けています。

しかし、効率のみを求め続けてしまうと、環境負荷には目が行き届かなくなってしまうのではないでしょうか。

効率のみを重視し、安さや便利さだけを求めるのではなく、サステナブルな取り組みをしているその過程に目を向ける必要が出てきたと思います。そのためまずはそういった取り組みを「知る」ことが大切な一歩であると考えます。

そして「知る」機会が増えて、多くの人が持続可能な取り組みや生産者の想いを認知できたとき、大量消費とサステナブルな消費という、相反する両方の商品が同時に市場に出回ることができるのではないでしょうか。

もしそうなったら、日常の買い物の中で消費者にとって選択肢が生まれるでしょう。より多くの人が意識的にどちらかを選択できるようになり、世の中が変わっていくかもしれないなと思いました。

もちろん、そんなに急に世の中は変わらないかもしれません。けれども私は社会の中の消費者の一員です。「サステナブル商品のやむを得ない価格高騰と市場に出回る商品との価格競争」というジレンマを今回の授業で「知る」ことができました。

そのため、まずは今日から私自身が一消費者として、サステナブルな消費を考えながら買い物をしていきたいです。そして今後、多くの人が上記の事実を知り、多くの人の行動が変わっていったとき、本当に世の中が変わっていくかもしれないと思っています。

坂本里菜(さかもとりな)
1997年生まれ。2020年3月法政大学経営学部経営学科卒業。社会人2年目。幼いころから嫌いな食べ物が1つもなく、食べることが大好き。大学時代のゼミでフードロスのイベントを開いたことがきっかけで、「食」にまつわる様々な課題に興味を持つようになった。「食」について憂うことなく持論が持てるように勉強中。

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