ここは浅間山の麓、長野県小諸市。わかりやすく言うと、軽井沢と上田の間にあるまち。わたしは、だいたい1年前にここでカフェ・バー、ホステルと古本屋がひとつになった複合施設［NOVELS］をひらいた。

23歳で横浜から移住して、25歳でお店をひらく。丸の内をヒールで闊歩するOLも自分の未来にあったと考えると、想定外だったけれど移住して3年たった今では自分もここで育ったのではないかと錯覚するほどこの風土が自分にフィットしているのだな〜と浅間山を見るたびに思う。

いまでは移住やまちづくりで注目されるようになった小諸のまち。私が移住したての頃は、「新しいお店がこれから２軒くらいできるんだよ〜」と言われても、実際はシャッターばかりの商店街や開いているのか開いていないのか分からないお店ばかりだった。

それでも小諸で出会う人みんなが、楽しく、素敵な人たちばかりで、いつの間にかこんな人たちがいるまちは、店なんか無くっても、生活が多少不便でも、楽しく暮らしていける！と確信が芽生え、生まれてはじめての一人暮らしを小諸ではじめることになった。

［NOVELS］は、移住してから暮らすなかでこんな店がまちにあったらいいのにな〜と思うことをぎゅぎゅっと全部詰め込んだお店。

移住してから、毎月いろんな友達が小諸に遊びに来てくれた。そんな時に、温泉旅館かビジネスホテルくらいしか泊まる場所がなく、毎回私の築40年越えのアパートに泊めていた。温泉旅館も素敵だけれど、20代前半の同世代には敷居が高い。せっかく小諸まで来てくれているのにビジネスホテルは味気ない。いつからか小諸に若者が気軽に泊まれる場所が欲しいと思っていた。誰かやってくれないかな〜〜〜。

本屋も欲しいな〜。まちなかに小さな本屋が一軒だけで、きちんと選書されている本屋がなかった。本数の少ない電車まちの時間に寄れる本屋もあったら生活が豊かになるのにな〜。誰かやってくれないかな〜〜〜。

気軽にいつでも寄れるカフェも欲しいと思った。入るのに勇気がいる渋い喫茶店も好きだけれど、ひとと待ち合わせたり、仕事終わりに寄れたり。暇でも忙しくてもそれぞれの時間を過ごせる。そしてなんなら、まちの学食みたいな場所になったら楽しいのにな。誰か、カフェやらないかな〜。

わたしじゃなくても、誰かやってくれればいいのに。

でも、このビルに出会ってしまった。

当時は、廃墟でなんだか重苦しい空気を纏っていた元々書店だったビル。まちを歩くたびにここのシャッターが開くだけで、まちが明るくなるのになと思っていた。それだけ存在感があるビルだった。

はじめて中に入った日は、みんなその廃墟感にドン引きしている中、わたしはひとりワクワクして、その日の夜は眠れなくなった。こんなに好奇心掻き立てられるビル、誰かにやってもらうのもいいけど、わたしもやってみたいかも！！

そんなこんなで語り尽くせない色んなことを乗り越えて、だいたい1年前に［NOVELS］が誕生したのでした。

オープンしてからは、地元のおじいちゃんが毎朝コーヒーを飲んだり、若者たちのデートスポットになったり、打ち合わせ場所になっていたり、子どもたちが来たり、海外の宿泊ゲストが次に向かうところを相談したり、［NOVELS］はいつもいい感じにカオス。

このバックグラウンドが違う人たちが集い、小諸の日常と、旅人たちの日常が混ざり合う時に大事なのが料理だと思うわけ。［NOVELS］では、金髪がトレードマークのシェフともき君が料理を作ってくれている。

小諸の人には、ビビッと来るような新しい発見があるような料理が提供できたら嬉しいし、旅で小諸を訪れたゲストたちには、小諸のローカルで大事にしてきたものも知ってほしい。

そんな無茶振りを叶えてくれているともき君には大感謝。

もちろん、移住してきた若者が1人でビルを丸ごと使うなんてできないので、いろんな人の手を借りに借りまくって、現在も［NOVELS］を形作っている。それはよく言えば、［NOVELS］にはみんなの関わりしろや余白があるってことかな（笑）。

そんなわけで、RiCEの連載では、［NOVELS］の大事な要素である「食」に関わってくれる人を紹介したいなと思っています。本当にみんな素敵なので、NOVELSだけではなく小諸の人に出会うきっかけになったらいいなと妄想しています。

NOVELS
住所：長野県小諸市相生町２丁目１−３
営業時間：8時30分～21時30分
火、水曜休
IG @novels_komoro