
連載「Somewhere with a glass.」#2
〜ニューヨーク・ハドソンの小さな町から〜
マンハッタンの中心地から長距離列車のアムトラックに乗って2時間ほど北上すると、今回の目的地であるハドソンという小さな町に辿り着く。高層ビルが立ち並ぶマンハッタンから少し離れれば、雄大なハドソン川の風景が広がる。しばらくして到着したハドソンは、マンハッタンやブルックリンと同じニューヨーク州の町ではあるけど、とても同じ州とは思えないほど、のんびりとしていて、かわいらしい場所。


アップステートと呼ばれるこのエリアは、忙しない日々を過ごすニューヨーカーが週末を使って訪れる憩いの場所らしい。 僕がこの町を訪れた理由は、[Suarez Family Brewery]というトップブルワリーを訪れるため。だけど町を歩くと、他にもいくつかのローカルブルワリーがあったり、ナチュラルワインやサイダーを扱うボトルショップがあったりと、そのセレクトにもセンスの良さを感じる。わずか数百メートルの小さなメインストリート沿いには、ギャラリーやアンティークショップ、自然なつくりの食材を集めたお店も並ぶ。そんなお店の合間には町の人たちが集う庭のような花屋もあって、流れる空気が心地よい。本当にここもニューヨーク?



目的の[Suarez Family Brewery]への訪問は、それは素晴らしいもので、ビールの品質と味わいはもちろんのこと、一流の生産者は一流の哲学があることを身を以て知る。このブルワリーのことは、noteに書いたので詳細はそちらに譲るとして、[Suarez Family Brewery]の人たちにハドソンのおすすめを聞いてみると、この街には、いくつかの最高のレストランやバーがあって、教えてもらった中から[Merkin Hudson]と[Lil’ Deb’s Oasis]を訪れた。
[Merkin Hudson]は自然なつくりのワインが揃えてあって、[Suarez Family Brewery]でかなりビールを飲んでいたにも関わらず、グラスで2、3杯のワインを飲む。小さなガレージのようなこの場所はハドソンの町の人たちの交差点のよう。小さな店内は常に客で賑わっていて、たのしい。のんびり飲んでいたら、さっきまで[Suarez Family Brewery]でビールをサーブしてくれたスタッフも来て、一緒に乾杯。



お腹も空いたので、この後に訪れた[Lil’ Deb’s Oasis]は、なんだかヘンテコなエスニックなレストラン。だけど、店内の雰囲気もかわいくて、スタッフも明るく、オープン。実は、この時までアメリカの物価高と強烈な円安(当時レートで165円)という状況もあって、それらしい食事をしていなかったから、この日は好きなものを食べようと決めていた。頼んだのはサラダとこのお店の名物であるハドソン川で釣れた魚のフライ(見た目よりもずっと美味しい!)。



疲れもあったのでそこそこで切り上げて、この日は早めにホテルへ戻る。翌朝、いつものように朝ランをしたら、よくわからない草原のような場所に辿り着いた。今の日本だったら熊でも出てきそうでドキドキする。それでもちょっとした冒険のようで走っていたら、ハドソン川にぶつかった。これはまるでアマゾン川みたいだ。



ブルックリンは、もちろんそれは最高に刺激的で、多くの学びや発見があったけれど、その流れの早さや人の多さに少々疲れてもいたので、ハドソンの町は自分のリズムを取り戻すチューニング的な意味も含めたショートトリップになった。何より、この町ではマンハッタンで騒々しく鳴り響いていたクラクションの音を聞くことはなく、小さな鳥たちの鳴き声が聴こえていた。


鎌倉のボトルショップ[salo]のオーナー。自らが酒の世界に興味をいだいたきっかけとなるビールの他に焼酎、ジン、ミードまで。独自の目利きによって厳選されたラインナップで、オルタナティブな酒体験を提供する。salo web store
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