
連載「Somewhere with a glass」#1
〜ニューヨーク・ブルックリンから〜
はじめまして、鎌倉でsaloという酒屋・ボトルショップを営んでいる青山と申します。ご縁をいただき、連載をやらせてもらうことになりました。
仕事柄、国内外の様々な土地を巡ることも多いのですが、この連載では、その各地の雰囲気や人々の暮らし、そしてお酒のある風景が伝わるような場にしたいと思っています。ゆえに連載のタイトルを「Somewhere with a glass」としました。どうかお付き合いください。


初めてニューヨークを訪れたのは2006年の夏、ちょうど20年前のこと。
当時の僕は音楽や映画、写真といったカルチャーにどっぷりと影響を受けていた大学生で、ニューヨークかロンドンという二つの選択肢から散々悩んだ末にニューヨークを選んだ。 ニューヨークに決めた決定的な理由は、Talking HeadsやThe Television、Patti Smithなど伝説的なミュージシャンを輩出したCBGBというライブハウスがこの年で閉じてしまうからだった。
「絶対にCBGBに行きたい」
そうして、ニューヨークに決まった。形式的には語学留学という形で、約2ヶ月間、大学の夏休みを利用して訪れたわけだったけど、英語を学ぶことにそれなりに本気だったので、日本人の友人をほとんどつくることなく、多国籍な人たちと夜な夜な遊び歩いた。ある真夜中のチェルシーの街角でヴィンセント・ギャロに出会った時には、ニューヨークってすげえ!と興奮したものだった。



思い出話が長くなりそうなのでここまでにして、今年、20年ぶりにニューヨークを訪れた目的は、「酒」の最先端のシーンを見たいと思ったから。saloをオープンする前は、コロナ禍を除けば毎年のようにヨーロッパを訪れていた。どちらかといえば最先端というより、クラシックを辿るような旅は自分の志向に合っている。でもだからこそ、思いっきり最先端に振り切ったシーンを見たい。そういった理由だった。
またシーンというのは、酒づくりだけではなく、どういう場所で、どういう人たちが、どのように飲んでいるのか?そういう街や人の暮らしを感じたい。ゆえに今回は生産者を訪ねることだけでなく、バーやボトルショップなど、どちらかというと飲み手に近い距離感でシーンを見たいという気持ちもあった。
今回滞在したのはブルックリンのゴワヌスというエリア。このエリアは工場地帯も近く、労働者も多いから生活の匂いを感じることができる。近頃はギャラリーや小洒落た店も集まり始めているけれど、ウィリアムズバーグのように洗練されすぎていない。滞在中は毎朝プロスペクトパークまで朝ランをしていて、それは時差ぼけした身体のメンテナンスの意味合いもあるけど、走ることで街の構造や人の流れがわかるからだ。「いい店」は大体、朝ランのおかげで見つけることができる。




ニューヨーカーの朝は早くて、早朝からランニングやバイクで、それぞれがマイペースに走っている。ある朝には、マーケットが開催されていて、ランニング帰りに新鮮な野菜やパンを抱えて帰る人もいた。今回はキッチン付きの宿ではなかったから買い物はできなかったけど、ニューヨーカーの食卓を覗いているようでたのしい。
そして、何よりゴワヌスの周辺にはFINBACKやThrees、Wild East Brewingがあって、少し歩けばOther Halfと、ニューヨークのみならず、世界的なトップブルワリーが並ぶ。到着した日に訪れたのはWild East Brewing。アメリカのタップルームはとにかく広い。そして、お客さんも飲むから、とんでもない数のタップが繋がっていても、ビールの回転は早い。だから、最高にフレッシュなビールを飲むことができる。





そして、このWild East Brewingは、IPAに代表されるホップ主体のビールよりも、ラガーやファームハウスエールといったクラシックなスタイルのビールをつくる。クタクタの身体に彼らのLukrのタップから注がれるチェコピルスナーは染み入るようで、1杯だけにして帰るつもりが、ついついおかわりをしてしまった。
さらには最先端のシーンを学ぶためにニューヨークに来たと偉そうに言っていたのに、初っ端から、ラガー。こんな感じで、頻繁に言っていることとやっていることが違ったりする酒屋ですが、どうかしばらくお付き合いください。


鎌倉のボトルショップ[salo]のオーナー。自らが酒の世界に興味をいだいたきっかけとなるビールの他に焼酎、ジン、ミードまで。独自の目利きによって厳選されたラインナップで、オルタナティブな酒体験を提供する。salo web store
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Hiroyuki Aoyama
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