熟成ビールへの挑戦
箕面ビールBATON―紡ぎ継がれる豊かな味わい
日本のクラフトビール黎明期から業界を牽引し続ける[箕面ビール]。直近のワールドビアカップではスタウトが銀賞を受賞し、箕面市内の飲食店を覗けば老若男女に飲み親しまれる。世界のプロから地元客にまで愛されるクラフトビールの雄が、六年前より手掛けているのが熟成ビール「BATON」だ。
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醸造所内にひしめき合うステンレス製タンク。その中にそびえ立つ2機のフーダー。片方は常時ピルスナー、もう一方には毎年異なるスタイルのベースビールを寝かせる。フーダーから取り出すタイミングは常に模索中。数値では計り知れない、ビールの新しい可能性を手探りで追求し続ける。
ステンレスタンクで発酵を終えたベースビールをフーダーに移して長期間熟成。瓶詰めしてからもなお、二次発酵を推進させる。実に重層的に紡がれるビールなのだ。
代表の大下香緒里さんは、その口ぶりこそ淡々としていたものの、「BATON」にかける想いや高揚感が見え隠れしていた。
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「ビール屋は常に掃除が仕事です」。予定調和じゃないビール造りは、徹底した衛生管理と技術、経験があってこそ。
「予定調和じゃない。想像し得ない味わいが熟成ビールの世界には広がっています。人間がコントロールしたくても仕切れませんから」
特に印象的だったのが、味わいの着地が読み切れないことを楽しむ態度。もとより「Chimay」に代表されるベルギーの伝統的な修道院ビールが好みだった大下さんは、蔵付き酵母による熟成、ゆえに他者が模倣できない唯一無二の味わいに憧れ続けていた。それは、[箕面ビール]が辿ってきた足跡にも刻まれている。熟成ビールが国内で普及する以前の2010年代初頭から、「イチローズモルト」の木樽を取り入れたビール造りに挑戦してきたのだから。
しかし、国内クラフトブルワリーの中でも指折りの流通量を誇る[箕面ビール]。少数の木樽ならまだしも、敷地内占有率が高く、回転率が低い熟成用巨大タンクの導入には踏み切れずにいた。葛藤の最中、6年前のパンデミックが転機となる。
「コロナ禍で売れ行きの見通しがつかなくなって。定番のスタイルは瓶詰めから四ヶ月で賞味期限が切れ、廃棄になってしまう。でも、時間の経過が味わいを形づくる熟成ビールならば違う。新鮮さではなく、寝かせることが付加価値になるから。ずっとやりたかったことが、環境に強いられることで実を結んだんです」
熟成タンクに選んだ特注のフーダーは、「木を育てる手触りがある」と充実を口にする。ベースビールや副原料の選定によってフーダー内に棲み着く酵母も刻一刻と変化する。紛れもない、世界唯一の熟成タンクとなっている。
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[MINOH BEERWAREHOUSE]内ショーケースに並ぶ定番スタイルの数々。
長期間の構想を経て誕生した悲願のシリーズは、初回リリースから4年が経過している。
「いまなお瓶内で熟成は進んでいて。どのタイミングで飲むのがベストなのか?お客さんと一緒に楽しみたい」
瓶内発酵による味わいの移ろいは熟成ビールの醍醐味と言っていい。[箕面ビール]が紡いだ最後のバトンを受け取り、時の経過が織りなすロマンに触れてみてほしい。
箕面ビール
大阪府箕面市牧落3-14-18
Tel 072-725-7234
WAREHOUSE 11:00~21:00
PUB/11:00~21:00 LO/20:30 (日曜のみ11:00~20:00)
木曜定休 ※祝日等の兼ね合いで営業終了時間が変更になる場合もあり飲酒は20歳から。飲酒は適量を。飲酒運転は法律で禁じられています。妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。
本記事はRiCE47号「特集 ビールは自由だ。」の掲載記事を再編集しています。
写真 在本彌生 Photo by Yayoi Arimoto IG @yoyomarch
文 菅野匠悟 Text by Shogo Sugano
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