鴨川の街、台の灯り 002

「ただいま」


Maddie JianMaddie Jian  / Dec 25, 2025

真夏の台北は、まるで“情熱の蒸籠”。

京都と同じく、台北も山に囲まれた盆地。夏になると、街全体がひとつの大きな蒸籠になる。その中を歩く私たちは、じわじわと小籠包のように蒸されてゆく。

関西空港から朝の便に乗れば、お昼すぎには台北到着。感覚としては「ちょっと東京行ってくるわ」くらいの距離感。

到着してすぐ、母が買っておいてくれた地元人気店のお弁当で昼ごはん。

鴨肉とおかず三種、約800円

胃袋が先に帰省完了!

一方、台所ではすでに、父が次のごはんの準備を始めている。

実家に帰るのはまるで摂食マラソン!

キッチンは父のテリトリー

台湾では“料理するお父さん”は、少なくはない。

週末は、父と朝市に行くのが定番。

その日の昼と夜のメニューを決めるのが、我々の朝のミッション!

昔は屋台のような露天市場だったけど、雨の多い台北では何かと大変で、私が中学生の頃に屋根付き市場へお引っ越し。

市場までは徒歩8分。小話するにはちょうどいい距離。ご機嫌なときは台湾語で演歌を歌ったり、通っている市民プールのゴシップ、たまに母へのぼやきまで。私にとっては、離れて暮らす両親の日常を覗ける、贅沢な8分間。

父と市場を歩くと、お店のおばちゃんたちに軽やかに声をかけていく。

「今日も綺麗ね」「パーマお似合いですよ」——

後から聞いた話では、それを言うと“おまけでネギや生姜が増える”らしい。

……なるほど、生活の知恵(?)

買い物が終わると、市場の角の豆花屋さんでおやつタイム。これも毎回のルーティン。もちろん、母にはナイショ。

角の豆花屋さんと元気なおばはん。選べる具2種+豆花¥198

タロ芋と緑豆は私のマスト入り!

二つの食卓

食卓には民族性が表れる。

日本のように小皿を綺麗いに並べる定食スタイルではなく、台湾はドーンと一品ずつ、時には鍋のまんま、みんなでシェア。(洗い物が少なくて済む、という合理性も込み)

日本の食卓には美意識と儀式感がある。器の配置、盛りつけ、間の取り方——すべてに「いただきます」の精神が宿っている。

一方、台湾は見た目より中身!味がすべて!(見た目はほぼ全部茶色やけど)でも近年のSNS文化の影響で、少しずつ「映える茶色」になりつつある。

とはいえ、基本は効率重視で、ちょっぴり優雅に食べるより“ガッツリ腹パン”の勢いが勝つ。

そういう合理的で、ちょい雑で、でも人の温度があるところ——それがやっぱり、台湾の食卓やなーと思う。

日本が「醤油・みりん・砂糖」で整えるなら、台湾は「ニンニク・ネギ・生姜」から始まる。香りを立たせて、油で全体をまとめる。少し荒っぽいけど、食欲をまーすぐ刺激する。

日本の食卓が“静かな会話”なら、台湾の食卓は“賑やかな宴会”。

騒がしい食卓の音も、油が弾ける匂いも──帰る場所は、ニンニクの香りが先に知っている。台所の明かりは、いつも私にとっての“ただいま”。

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