食の交換日記。#001

役割の意識


Ayako MoriokaAyako Morioka  / Jul 5, 2025

こんにちは。[P.O.S.T studio inc.]の盛岡絢子です。
今回は最近考えている、それぞれの役割について。

* * *

先日6月20日、[FOOD&COMPANY]が主催する年に一度の食の商談会「Neighbors Food Market 25」を開催しました。食小売や飲食業のバイヤーさんをはじめ、たくさんの業種の関係者の方に足をお運びいただき、終始和やかな雰囲気で終えることができて、運営側として、まずはほっとしています。

Neighbors Food Market25の参加者の方と、開始前に集合写真。
Photo 田上浩一さん(@tanouekoichi

今回は、日本全国62の生産者・メーカーさんとともに。全面的に表に出してはいませんが、サステナブル、リジェネラティブ、循環型、自然共生型、アップサイクル…それぞれのテーマを掲げて体現しているブランドばかりです。ただ物を売り買いする場ではなく、ジャンルを超えて目指す未来について話す場所。その中で共鳴が生まれていたら、それ以上に嬉しいことはありません。

商談会では、バイヤーだけでなく、ジャンルレスな出会いが多々あります。たくさんの方と話す中で印象に残っているのは、サステナブルな漁業の実現を目指して活動する[UMITO Partners]代表・村上さんとの会話の中であがった、“協同組合”という言葉。

村上さんたちがともに活動する漁師さんは、日々海や魚と向き合い漁をします。獲った魚たちが小売店や飲食店に並ぶまでには、冷凍や加工製造、流通と長い道のりがありますが、漁をすることと売ることは専門性が大きく異なります。どちらも長けている素晴らしい生産者さんもいらっしゃいますが、それが全てではないのも事実。状況によっては、1人ではどうしようもないことだって、たくさんあると思います。地域の食産業が続いていくためには、流通させることも売ることも、役割分担してみんなで協力するのが良いのでは、という話です。その延長線上にあるのが、協同組合の形です。

会場では、この“協同組合”という言葉がこの時以外にもちらほらあがっていたのですが、漁業だけではなく、農業や林業もおなじ(日本ワインも然り)。そういえば、「Neighbors Food Market」の構想時から協力してくださっているクラフトの商談会「ててて商談会」も協同組合として活動しているな、と思い出しながら。よき未来を目指して共感の輪を広げ、役割分担して少しずつ進んでいけるのであれば、それはとても素敵なことだと思います。

日本のナチュラルワインをセレクト/販売する[KIKI WINE CLUB]の活動も、いわば共同組合のようなもの。ナチュラルワインを中心に自然酒や焼酎を、日本の農産物を使った液体として捉え、単なる商品としてではなく、地域の食文化とともにその魅力を伝えます。毎年2月に開催しているイベント「Hand to Hand」では、地域に根付く在来野菜を使ったお料理とともに9種のワインを飲み比べながら、醸造家を招いたトークセッションや上映会を実施。

食は、特性上様々なジャンルに分かれます。農業、漁業、林業がさらに細かく細かく枝分かれして、それぞれの地域特性を活かしながら、加工製造が加わって産業が発達していきます。

先日訪れた福島の自然酒蔵[仁井田本家]の田んぼにて。オーガニックな造りで知られる彼らの田んぼには豊かな生態系が存在していました。そんな畑でバードウォッチをするのは沖縄発ベンチャー[Think Nature]代表・五十里さん。

同じ食材でも、地域が違えば全く異なる背景と文脈、意味あいを持ち、味わいまでもが異なります。どれがいい悪いではなく、それぞれの課題を乗り越え、100年先も個性を持って「或る」状態を目指すために。生産者、製造者、流通業者、小売飲食業者などフードサプライチェーンに関わる人それぞれが、地域や向き合う食材の垣根を超えてお互いを知ること、お互いと自分自身の役割を理解すること。そして、手を取り合うこと。この三つが、とても重要だと思っています。

祐理子の話にあがった「人の営みと物質との関係性」は、共同組合のあり方を考える上でも、とても重要なテーマだと思います。

原宿に生えている植物の採取をする、中村くん(写真左)と[HERB STAND]平野くん(写真手前)。育てるだけでなく、都市に息づく植物を探します。

[P.O.S.T studio]の共同代表の一人である中村元気くんは、都市における人の営みから派生する物質のあり方に注目し、食として消化させるアーバンファーミングやクリーンナップ活動を10年以上続けています。また、都市に限らず農地など生産地から生まれる物質のあり方をテーマに、経済合理性の過度な追求によって現状の流通ではこぼれ落ちてしまう素材の活用を目指して、流通や商品開発のプロジェクトも進行中。

富士山麓、春の雪山でのフィールドワーク。野山の素材を楽しく活用するため、商品開発や素材流通に取り組んでいます。

流通からこぼれ落ちた素材が1つのプロダクトになるためにある程度まとまった量が必要ならば、みんなで協力して集めればいい。あるものを最大限に活かすために素材の居場所を見つけること、協同組合ならばそれが実現できそうな気がしています。

* * *

ちょっと話が逸れましたが、前回の「循環」から転じて、最近感じた役割分担と協働の文脈で書いてみました。当たり前のことかもしれませんが、現代の自然共生の文脈において、適正な循環を生み出すために大切なことをみんなと考えた、という話。

建築領域ではどうやって実現していくんだろう。祐理子の話も聞いてみたいです。

Illustration by Jonathan Bjørn Elley
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