一期一食

#57 「好奇心の波に乗って 後編」


Orito HamadaOrito Hamada  / Mar 20, 2022

ドーム本番も終わり、次の現場に向けて人間と機材のメンテナンス。なんか、現場とメンテを繰り返す生活のような気もしている。ちょっとチルしたいな、今年の春は。キャンプとサーフィンに行こうと即座に思って予約をパチパチ。またその話もしたいな。

さて、コロナにまつわる言葉はこの回をもって書かないことにしようと思っています。大変なことも山ほどあったけど、喉元すぎればなんとやらだし、人生そんなもんだし、それ以上に僕はそのタイミングでたくさんのグッドラックに恵まれたと言える。そんな話を書きたいと思う。

一つは、バンド(SPiCYSOL)のサポートやプロデュース中心に活動を移していったこと。これはもう少し丁寧に紐解こうと思うけど、僕らスタジオミュージシャンという仕事がどうなっていくのかを考え始めてしまったことだ。きっかけは、長くサポートをしていた大きなアーティストのことだったけど、いかに自分が依存しているか、自分の足で立っているようで立っていない感覚。自分の人生、切り拓いているのかな?と思ってしまったこと。現実は違うけど、僕が消耗されている感覚に陥ってしまったことだ。

今まさに世の中のイデオロギーが立て続けに音を立ててガラガラと動き始めている。イス取りゲーム的要素も近い仕事なので、まぁいいこともあれば生々しいことも増えてきた。本来そういうのが僕は特に好きじゃなくて、それにそもそもそういう勝負に勝ったからといって嬉しいわけでもない。ピースフルじゃないなぁと。そもそも音楽との向き合いを曲げてまで、やりたい仕事なのか?というのは昔から思っていた。運良く続けられ、若いときに先輩に言われた「30歳の篩、40歳の篩」も走り抜けていたら運良く残っていて、さぁて、これからどうするかと思っていた。後どのくらい続けられるかも勿論わからないし、どのくらい続けたいのか?意識して一つ一つの現場を捉えるようになっていった。前ばかり向いて生きてきた僕にとって、初めて色んな方向を向いて考えたのだ。若いうちからライヴだけじゃなくて、制作をやりながらの状況が、武士的で職人的なベーシストに憧れていた僕にはネガティブに捉えていた時期もあったけど、音楽プロデューサー業は今となっては幅となり、自分の音楽を広く捉える一つの要素にもなっているし、そうやって与えられた場所で咲くことも大事だと最近すごく思うようになった。自分の限界だけで世の中を捉えるのはやはりもったいないものですよね。そんな矢先、家族以上になっているかもしれないメンバーと一つの音楽を突き詰められる環境はやればやるほど楽しかった。自分が得てきた知見や実践的知識を惜しみなく使えるし、それによってメンバーが変わっていくことがベーシストとして幸せそのものだった。

もう一つは、僕がもっと純粋に勉強したくなったことだ。音楽家然り、モノや価値を創る仕事は往々にして現場主義だ。理論も実践からの体系化の方がほとんどだし、実践法の方が圧倒的に多い。理論があっても、実行が甘ければなんの意味もない。キャリアを積めば自然と、創る場も増えるし、やめられない、とめられない状態になっている。

続けられることがありがたいことです、本当に。

ある程度のキャリアも積んでいけば自然と教える立場のオファーも増えてくるし、僕はおそらく教えるのが比較的上手な部類なんだと思うけど、それでもどうも足が遠のいていた。なんでだろうって。勿論、個人的に僕の家に来て、一緒にベースで遊びながら研鑽し合うベーシスト仲間が昔から多かったのは事実。機材や演奏法のことはすべてシェアしたし、惜しみなく僕が知っていることは教えていた。自分の活動をさっき書いたように変えながら考えていて、得た結論が「あっ、僕勉強したいんだ」と思った。ミュージシャンがこんな結論になるなんてどうかしてるって思う人も多いかもしれないけど、勤勉な人が実は多い仕事だと思っています。

そんな中で、僕は先生になるより、生徒になる方がかっこいいし、自分のことを誰も知らないところでがむしゃらにやってみたかったし、自分が積み上げてきたことを次に進むために整理して、自分を知って、次の道標を得るために、京都芸術大学の大学院に入ったのです。と書くのは簡単だけど、まぁよく勢いだけで入れたなと我ながら思う笑。同級生を見てびっくりした。20代から60代、男性より女性が少し多いくらいで半々、北海道から沖縄まで、職種も幅が広すぎる。すごい人ばかりで引いた。ミュージシャン、医師、弁護士、副市長、社長、教授、官僚、会社員、デザイナー、地域で活躍している人etc。僕みたいな仕事をしている人の方がいないのがとにかく楽しかった。コロナも相成り、ほぼオンライン授業が主ということもあり、ツアー先で課題をやったり、リハと本番の間に、それっと動画学習したり、自宅で学んだり。ほぼ誰にも言わなかった。表に出る仕事なので、同期にもそういうところは協力してもらい続けてた。ツアーで全国行くたびに地域にいる同期と会うのが楽しかった。

同期のみんなには、心から感謝。

今思い返せば、恵比寿リキッドルームの本番直後から入学したんだから、いろんなことをやってきたもんだ。2年間の学びの話はいずれ紐解こうと思うけど、今日僕は修了式に出るために京都に来た。大学を卒業したのが約20年前だから、こういう式も約20年ぶり(もちろん家族の式があるけど、それは別として)。久々に大学のゼミの先輩たちにも会いたくなった。ゼミの先生で僕の人生を変えてくれた林吉郎先生(きっちょむ先生)にも会いたくなった。元気してるかな。

食べ物の話をしてなかったですね。今回の一期一食は、父親にも直前まで隠してたくらいで、父に話したらお祝いに予約してくれた先斗町のフランス懐石のお店禊川で頂いた牛フィレ肉のステーキとお野菜の付け合せです。

こんなにしっとりして優しい火入れのフィレは食べたことなかったな。

お店の設えも僕らしいところで、親父に一本取られた気分です。少しは親孝行になったかな笑

生きることは、学ぶことであり、今日は最初で最後の先生との対面の授業だったけど、僕は現場で撮影があるので、朝早くに帰京。僕はミュージシャンなんで、そんなものです。

何も変わらないし、人生はただただBPM60で進み続けるんです。

Life goes on.
Life is wonderful.

追伸:朝帰る新幹線でいただくのは、関西シウマイ弁当です。これも同期が買ってきてくれた。本当に最高。手前に白山湯高辻店を入れたのは言うまでもない。

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