この酒いいよ、飲んでみて。

コラボ報告① 鳴神 × animism bar 鎮守の森


Toshiki TakeguchiToshiki Takeguchi  / May 24, 2018

シェフの考案した料理にお酒を合わせる

前回アップしたとおり、今回よりコラボイベント報告書として、各店とのイベントの様子をお伝えしていきたいと思います。

コラボの流れとしては基本、先にコース料理をシェフに考案して頂き、それを私が試食し、合わせるお酒の味わいをイメージして一皿に対していくつかセレクトします。そこから最終的にはイベント当日にその日の天候・気温・湿度を元に味覚チェックをし、お酒を決定しています。

今回は「フレンチジャポネーゼ」や「イノベーティブ・フュージョン」と呼ばれる南青山[鳴神]の鳴神シェフと4月1日に開催したコラボをご紹介します。下記が当日お出しした料理とお酒のリストです。それぞれの料理にお酒をペアリングしました。

コースメニュー
①赤貝 富山県産蛍烏賊 ぬたのハーヴ味噌和え コンソメジュレ寄せ
②春子鯛蒸し このわた風味のフランと
③明石蛸の赤ワイン蒸し 春野菜とカマス バジルソース
④金目鯛と桜鱒 根セロリのピュレ トリュフ風味
⑤佐賀県産ホワイトアスパラガスとのどぐろ パプリカのソース
⑥鮎魚女とマッシュルームのソース うにを添えて
⑦パン・デピスとフォアグラのサンドウィッチ
⑧本日の和牛 トマトジンジャーソース
⑨新生姜の炊き込みご飯
⑩酒粕のアイスクリームとスペイン産オリーブのジャム

お酒のメニュー
①龍勢 活濁酒 (広島県・藤井酒造)
②寒北斗 辛口純米Shi-bi-en〈春〉(福岡県・寒北斗酒造)
③神稲 純米吟醸 野条穂 (兵庫県・太陽酒造)
④泰斗 純米無濾過生原酒 亀の尾 (熊本県・千代の園酒造)
⑤横山五十 純米大吟醸直汲み生 (長崎県・重家酒造)
⑥花垣 純米無濾過生原酒 越の雫 (福井県・南部酒造場)
⑦華鳩 貴醸酒の生にごり酒 (広島県・榎酒造)
⑧浜千鳥 純米吟醸生酒 吟ぎんが (岩手県・浜千鳥)
⑨ ⑧と同じ
⑩稲花 本醸造熟成酒1994年 (千葉県・稲花酒造)

⑧と⑨は料理がほぼ同タイミングでの提供でしたので、お酒も両方の料理に寄り添うような味わいでセレクトいたしました。恐らく、お酒のリストを見ただけでは伝わりづらいと思いますので、大まかな味わいと合わせたポイントを説明していきましょう。

①赤貝 富山県産蛍烏賊 ぬたのハーヴ味噌和え コンソメジュレ寄せ + 龍勢 活濁酒

▲ 白味噌の風味と甘味を活かしたい、野菜の旨味と苦味も感じてもらいたいという狙いで繊細な味わいながらも膨らみある味わいであり、かつ1杯目なので食欲を湧かすよう、ややガス感のある強すぎないスパークリングとして龍勢を合わせました。

②春子鯛蒸し このわた風味のフランと + 寒北斗 辛口純米Shi-bi-en〈春〉

▲ 鯛の出汁の旨味が口中いっぱいに行き渡り、やや塩味があり、柑橘類の爽やかな香りとクエン酸が低音のように響き渡るイメージでしたのでこちらも繊細ながら柔らかな酒質で合わせました。お酒に感じる乳酸と柑橘類のクエン酸の絶妙な味わいの融合を狙っています。

③明石蛸の赤ワイン蒸し 春野菜とカマス バジルソース + 神稲 純米吟醸 野条穂

▲ 筍の旨味とバジルの爽やかな香り、カマスの繊細な風味、蛸のぷにゅっとした柔らかな食感と甘旨味と方向性の違う食材たちが1つの皿として成り立ってました。これは非常に難しい。筍に照準を合わせたら他がボヤけてしまうし、カマスに照準を当てても、蛸に照準を当てても他の食材とお酒との結びつきが難しくなってしまう。では、このお皿に合わせる1本のお酒を温度を変えて合わせたらどうだろう? と思い立ち筍のあの芳ばしい土の香りに寄り添うように常温で、カマスの繊細さを極めて感知しやすいように冷酒で、蛸の甘味をより伸ばす用に燗酒で提供しました。結果思っていた以上に料理とお酒が絡み合い、お客様には料理とお酒を同時に口にしていただくと、どよめきと歓声が……料理だけの時の味わいとお酒だけでの味わいでは感じなかった第三の味わいが生まれた瞬間です。これがマリアージュと呼ばれるものかもしれませんね。

④金目鯛と桜鱒 根セロリのピュレ トリュフ風味 + 泰斗 純米無濾過生原酒 亀の尾

▲ こちらはトリュフの香りがあり、魚の繊細な旨味と脂味があり根セロリのピューレの青々しさがあり、これも合わせ方に悩みましたが直感的に『酸』が欲しいと感じました。脂味の甘味も活かしたい。その甘味を伸ばすのに微量の酸が欲しいという思いとセロリの風味の邪魔をしないようにお酒単体の香りでもやや青々しい野草の様な香りが欲しくてこのお酒をセレクトしました。

⑤佐賀県産ホワイトアスパラガスとのどぐろ パプリカのソース + 横山五十 純米大吟醸直汲み生

▲ まず焼き魚の皮の焦げの食欲を誘うあの魅惑的な味わい (鮭ハラスの身と焦げた皮の味わいに近いかな) に魅了され、アスパラガスのコリッコリッサクッとした病みつきになるような食感、そしてややバター感を感じたので乳酸をキーワードに料理とお酒を結びつけようと爽やかながら乳酸もしっかり感じとれ、優しい酸で頬っぺたの内側に付いた余分な油分を洗い流そうという狙いでこちらのお酒を合わせました。

⑥鮎魚女とマッシュルームのソース うにを添えて + 花垣 純米無濾過生原酒 越の雫

▲ 上に乗っているウニの風味の存在感の大きさ、ソースにやや感じたコンソメ感、肝っぽい感じがありました。料理の全体的な温度は温かめでしたので、極力全体の味わいを下から支えるような味わいのお酒が欲しいなぁと思い、冷酒だと硬さがあり料理の味わいを支えきれないので常温で飲んでしっかりとバランスが完成する酒質でこちらのお酒を合わせました。

⑦パン・デピスとフォアグラのサンドウィッチ + 華鳩 貴醸酒の生にごり酒

▲ 甘味がありフォアグラの旨味も濃厚にある料理でしたのでこの味わいを丸く包んで逃がさないように甘味でコーティングしようと思い貴醸酒の生にごりを合わせました。こちらの組み合わせも参加者から歓声があがりましたね。

⑧本日の和牛 トマトジンジャーソース
⑨新生姜の炊き込みご飯 + 浜千鳥 純米吟醸生酒 吟ぎんが

▲ ⑧⑨はほぼ同タイミングで出されたので (和牛をおかずにご飯を食べる感じ) 、両方のお皿に寄り添うように2つの料理の共通項であるジンジャーソース、生姜に照準を合わせました。ソースのエッジの効いた酸をなんなく受け入れる懐の深さがあり、肉の旨味を更に強く感じられるように相反する酸や香りでパイナップルが浮かび含み香に優しいパイナップル香りがあるお酒であり、人参の甘味や豆の青々しい味わいも邪魔しない透明感も両立して存在するお酒としてこちらをセレクトしました。

⑩酒粕のアイスクリームとスペイン産オリーブのジャム + 稲花 本醸造熟成酒1994年

▲ 最後の酒粕アイスクリームですが、こちらはなんといってもオリーブのジャムの特殊な甘さに魅了されました。「なんだっけ?どっかで味わったことのある味なんだよな~、なんか懐かしいというか……」と考えてるうちに私の脳裏に子供の頃の記憶が走馬灯のように駆け巡りました。駄菓子屋? ノスタルジックな香り……? 煮詰めたキンカン……ボンタン? などと浮かびあがり、ふと気づいたのです。このオリーブジャムをキャラメルマキアートに入れたらどうなるのだろう?キャラメルの代わりになるくらいオリーブジャムの存在感は大きいし……アイスクリームの乳酸も立たせるためには……味わいの強いものには極端に味わいの強いものを合わせると濃い味わいの中に一瞬(といっても数秒は感じられる)隙間が生まれ全く味のない世界が、顔を見せる (わかりやすくいうと台風の目に似ている) というのを日頃の営業の時のペアリングで実証してたので疑い無しに濃い味わいのお酒を探しました。そこで選んだのが熟成古酒。こちらの合わせ方もペアリングではなくマリアージュと呼ぶに近い化学反応でした。

このように味わいを一度分解し、足りないものは何か? あってはいけないものは何か? などを足算、引算、掛け算、割り算で味わいを創造していく……そしてその組み合わせをお客様に提供し味わっていただき感想を聞いて全てをまた頭の中にファイリングしていく……これがコラボイベントの楽しさです。

次回も他店とのコラボイベントの内容を報告していきます。

皆さんもぜひ、日頃の食事の中で、こんな味わいのお酒を合わせたら料理とお酒は口の中でどんな風に響き合うのだろう?などと考えて合わせてみてください。バチッと決まった時には思わずニヤッとしてしまうはずです。

鳴神
住所:東京都港区南青山3-4-6 AOYAMA346 1F
時間: 12:00~13:00、18:00~22:00
電話: 03-6447-4866
不定休
http://www.restaurant-narukami.com

animism bar 鎮守の森
住所: 東京都新宿区四谷3-11 第二光明堂 B1F
時間: 18:00〜22:30 (月〜金 )、15:00〜20:00 ( 土・祝 )
電話:050-3630-3175
完全予約制
定休日: 日曜日

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