RiCE編集チームが特集の裏も表も振り返ります!
RiCE編集部座談会「特集 日本の自由なSAKE」(後編)
12月6日に発売されたRiCE No.26 日本の自由なサケ特集について、編集部とAD平野暢達さんで振り返り座談会! 見どころ、編集秘話を盛りだくさんに前編・後編でお届けします。
後編では日本のサケとその周りの人々に焦点を当てて、特集を振り返り。
雑誌の醍醐味が表れた対談
舘﨑
クラフトサケ協会が2022年にできて、これが初の特集ということで。岡住さん(稲とアガベ)と[土田酒造]さんに行った帰りにお話したのですが、「協会を立ち上げて1、2年のうちにフェスができたらいいな」と思っていたら「猩猩宴」という男鹿と下北沢のフェスがすぐできて。雑誌の特集も3年経つ頃にはやれるようになろうって励まし合っていたらしいんです。それも、すぐできちゃったと。他の方に言わせると「岡住さんの巻き込む力っていうのは本当にすごい」ということらしいですが、秋田でのムーブメントを聞いていると本当にそうなんだなと感じました。一方で、日本酒の蔵の方たちから見てクラフトサケがどういう見られ方をするのかな?っていうのは(編集担当の)浅井さんとも話した部分だった。亜種じゃないですけど、そういう風に見られるのは違うし。星野さんとの対談ではお互いをリスペクトしていらっしゃることや、クラフトとは工夫であり自由であるというイメージが浮かんできて面白かったです。それでいうと、稲田さんが取材された三つ目の対談、佐藤さん(新政酒造)と黒木さん(黒木本店)の原稿を読んだ時、良かったぁって思いましたね。
稲田
佐藤さんと黒木さんの対談をやったのが、コロナ禍で立ち上がったJSP(ジャパン・サケ・ショウチュウ・プラットフォーム)の初めてのリアルイベントの時。そこで、麹のテーマから色々話が膨らんだ中で、「クラフトサケ」っていうキーワードをあえて投げてみた。一緒に行った人からは「ぶっこむなぁ…」と思われたみたいなんだけど、これは言わないとなって。去年の記事(No.20での佐藤さんと[仙禽]薄井一樹さんとの対談)の最後のパートで佐藤さんが予言に近いことを言っていたのを覚えていて、さすがですねと。そこから「やっぱりスタートアップは良いよね」「俺たち全然面白くないからなぁ」みたいな話になっていって。この対談ではけっこう業界的に踏み込んだ話も出て、そのまま掲載してある。カットされずに逆に増幅するくらいの戻しがあって、さすが度量が大きいなって。こういう話を見られるのが雑誌の醍醐味かなと。これをウェブに載せたら炎上するかもしれないし、変な誤解もいっぱい生まれるような気がするんですよ。わざわざこれを本屋で買って、読んでもらうってことで、届くべき人に届く。時間をかけて腹に落ちていくっていうことがあると思う。そこが雑誌だったり紙の役割かなっていう風には思いますよね。
めちゃめちゃ美味しい表紙巻頭
稲田
そういった全体的な構成も上手くいったなぁという感じはしまね。表紙巻頭も藤ヶ谷さんで、これも千葉麻里絵さんの新しいお店で。ほぼメディアに出てない状態で表紙巻頭ができたっていうのもそうだし、この特集にすごく合っていた。日本酒のトップソムリエなんだけど 元々[GEM by moto]の時から焼酎も出すし、クラフトサケ、どぶろくもスペシャリテと合わせて出していたから。今回は[とおの屋 要]の燻製をかけたどぶろくっていう完全に最先端なものだったり、焼酎も[国分酒造]のクールミントグリーンをソーダ割りで飲むっていう。一番イケてるものとペアリングの料理を出してもらって。最先端であるだけでなくて、めちゃめちゃ美味しいっていうことをやっている。藤ヶ谷さんはあまりお酒を召し上がらないと聞いていたから、こういうペアリングの体験っていうのは初めてに近いんじゃないかなって。3トップを味わってもらえて、その素直な感想を藤ヶ谷さんから聞き出せたので、そういう意味でも特別な表紙巻頭になって良かったかなと思いますね。
P23「藤ヶ谷太輔、千葉麻里絵(EUREKA!)によるサケペアリングを初体験」より/Photo by Kenta Aminaka
成田
特集扉も好きです。酒器のイラストが可愛かったり。文章も最後に「麹に乾杯」がきちっと出てるのもすごい効いてるなぁと。すごく新鮮でした。
平野
一応このイラストも全体のカテゴリーと色はマッチしているんです。
稲田
最後に色がついた感じですよね?
平野
最後まで赤と黒でいいのかなぁと思ってて、稲田さんの原稿を最後まで待とうと思ってふわっと考えていたんですけど、やっぱり「自由」というのがあるなと思って。色の広がりがあった方が自由っていうイメージが出るんじゃないかって、最後の最後でこのバージョンを作ったっていう感じですね。結果的にこのバージョンの方が良かったかなって思います。
稲田
ビジュアルについてはリニューアルして以降、平野さんと誌面をつくり始めてから新鮮に感じています。僕は分かりやすく酒とグラスの表現しか浮かばなかったし、僕とは全然違うアプローチを見せてくれるので。
P14-15 特集扉/Illustration & Design by Masatoo Hirano
焼酎は人で語る
稲田
適材適所で色んな人に手伝ってもらえた感じはします。浅井さん、神吉さんもそうだし、「自然酒」ページの鉄平さん(青果ミコト屋)チームも。はじめましてではなくて、深くこの二つの蔵(寺田本家と仁井田本家)とコミュニケーションをとって、それぞれ10回ぐらい通って写真も撮り続けている人たちに記事を書いてもらえた。初めての人が見るのとは違った深さがある気がする。焼酎のところの井上麻子さんもイベントで知りあって、空人君(NOMURA SHOTEN)のところで働いてたりという繋がりがあって。彼女が自主的に[川久保酒店]さんが主催した焼酎蔵を回るツアーに参加して、蔵を観て戻ってきたばっかりで「やりましょう!」って感じで。
P81「川久保酒店とめぐる、九州・芋焼酎の旅 中村酒造場」より/Photo by Toyochika Kawakubo (Kawakubosaketen)
成田
その現場感みたいなのはすごく良いなと思っていて。
舘﨑
川久保さん・井上さんの焼酎の旅ページは僕もすごい好きでした。その次に「サケカルチャーがハッコウする場所」として[キッチンかねじょう]や[かまびす]さんとか焼酎を扱うお店に取材に行った時にも感じたのですが、焼酎蔵に関しては皆さんすごく”人”を語るというか。すごく良いという意味で「ほんとこの人変態でね」とか、そういう語り方をされて、焼酎カルチャーというものを改めて知れた気がします。
日本のサケの可能性
小林
私は、クラフトサケってブームなんだなっていうイメージはあったんですけど、ブームだけじゃない日本酒の素晴らしさを伝えるためのクラフトサケでもあるんだっていうことを知れたと思います。あとは麹があるおかげで、それまでお酒になっていなかったものもお酒にできる。クラフトサケの延長にはそんなこともあるんだなと。その伝え方はポップに見えつつも、本質を表現しようとするのがクラフトサケなんだなっていう。改めてみんなにもっと見てほしいと思った。自分自身、日本酒はあんまり馴染みがなくて、しかも硬いイメージもあって。前回の日本酒号も面白かったけど、さらに入りやすくなった時代が来ているんだなぁっていうのが今回感じたことです。
舘﨑
クラフトサケ、僕も初めて知ったというか、取材を通してすごく良いものだなって知ることができたんですけど、飲むと本当に美味しいです。今ちょうど新酒がリリースされてきていますけど、それぞれ小さい規模でやっていることもあって、全然買えないです(笑)! なので見つけたら迷わず買ってほしいなと思います。それは焼酎も日本酒も、RiCEに載ってるのを見つけたらぜひ飲んでほしいです。まず、美味しいっていうことを感じていくといいなっていう。
P39「CRAFT SAKE CALLING で、クラフトサケって?」より/Photo by Taro Oota
次号も乞うご期待!!
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