おいしい裏話
「名産品」(RiCE No.34に寄せて)
利尻と言えば昆布、それは知っていた。
でも現地の昆布製品のパッケージとても素朴で、ああ、こういうものをおみやげにできたらいいなあ、という気持ちになった。
最近、道の駅的なところが大人気で、どの地方に行っても必ず工夫をこらしたさまざまなものを売っている。
瓶詰めのラー油的なもの、レトルトのカレー、ご当地ソース、ご当地ドレッシングなどなど。
そしてそれらはもはや極まりすぎて、原材料がその土地からむちゃくちゃ離れていたり、ものすごい添加物が入っていたり、それはそれでいいんだけれど、もう少し素朴でもいいのでは?と思うことが少なくない。
しかしあるとき、伊豆で道の駅に行き、焼津のかつおでできている猫用のおやつを見つけた。見た目はなまり節みたいで、人間が食べても良さそうだし、値段も高い。
猫のために奮発して買ってみたら、信じられないくらい必死で食べていた。なので単なるなまり節を買ってみたが、全然違う。
たまにこういう当たりがあるのが、道の駅ギャンブルだなあ〜、と思う。
1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞し小説家デビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、2022年8月『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数。近著に『下町サイキック』がある。