エディターズノート
「RiCE」第34号「タコス」特集に寄せて
RiCEの第34号、お手にとっていただきありがとうございます。桜の咲く新年度ということもあり、今号よりサイズが若干大きくなりつつボリュームも16ページ増とリニューアル。そんなフレッシュなタイミングにふさわしく今回は初めてのタコス特集です。
何故いまタコスなのか? 今号の制作中、何度もそうした質問を受けました。逆に「タコス最高ですね!」といって目をキラキラさせる方にもたびたび出会しました。それくらいはっきりリアクションが分かれるのも珍しいわけですが、前者の方に聞けばたいてい過去においしいタコスを食べた記憶がほとんどないと言いますし、後者の方の場合は好きなタコスの話で止まらなくなります(またそうした方はかなりの確率でネットフリックスの『タコスのすべて』にハマっていて、全エピソード制覇していたりします)。
ここ数年は街中にタコスショップの数がかなり増えましたし、いろんなポップアップも見かけます。楽しげなイベントやパーティには常にタコスを目にする気がするくらい。いまのフードカルチャーを象徴する存在であり、大ブームの兆しをばんばん感じている今日この頃です。
世界最強のストリートフード、タコス。いうまでもなくオリジナルはメキシコであり、彼の地では国民食です。朝から深夜までいつでもタコスを食べられる場所があって、それだけバリエーションも豊富。いろんな肉や野菜、ハーブなどをトルティーヤと呼ばれる皮で巻いてサルサをかけてガブっと食べる。めちゃくちゃシンプルですが、奥が深く、かなり自由度が高い。
日本で食べられるタコスには現在、大きく分けて4つのカテゴリーがあるそうです。一つはメキシコ直系のトラディショナルスタイル、二つ目は移民がもたらしたアメリカンスタイル、三つ目はそこからの影響下にある沖縄スタイル、最後に日本の食材を大胆に使ったニューウェーブスタイルで、ここには美食の要素も含まれます。本特集では、どのスタイルであれ日本中のおいしいタコスを厳選して取材しつつ、さらにメキシコ現地にも足を伸ばしてタコスの本質が浮き彫りになるよう手を尽くしました。
2024年現在にあって、おいしいタコスのリアル情報はかなり網羅できたと自負していますが、さらにタコスシーンの忘れてならない大切な要素がDIYの精神です。もともと出自がストリートなだけに、プロと素人の境目が曖昧で、腕に自信のある作り手が屋号を掲げて間借り営業したりといったことが頻繁に起こっています。そう、食べ手と作り手が交差しあってシーンを盛り上げており、数年前に世を席巻したスパイスカレーブームと似た状況が、タコスにも生まれつつあるのです。
さてもはや今更かもしれませんが、最初の質問に戻ります 。何故いまタコスなのか? まずはおいしいタコス、ガブっといってみませんか! さすれば自ずとわかるはず。
- RiCE.press Editor in Chief
稲田 浩 / Hiroshi Inada
「RiCE」「RiCE.press」編集長。ライスプレス代表。
ロッキング・オンでの勤続10年を経て、2004年ファッションカルチャー誌「EYESCREAM」を創刊。2016年4月、12周年記念号をもって「EYESCREAM」編集長を退任、ライスプレス株式会社を設立。同年10月にフードカルチャー誌「RiCE」を創刊。2018年1月よりウェブメディア「RiCE.press」をロンチ。
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