焼酎が熱くなってきた! キーマン2人と語ったトークを公開

OPEN BOOK 田中開さん × EUREKA! 千葉麻里絵さんが語った“焼酎熱”


RiCE.pressRiCE.press  / Feb 4, 2024

2023年は焼酎熱が巷に広がり始めた元年と振り返られるかもしれない。12月6日に発売されたRiCEでは「ジャパンスピリッツ(日本の蒸溜酒)新時代」の筆頭として特集された焼酎シーン。発売とほぼ時を同じくして開催されたイベント「ネオ焼酎酒場」では、選りすぐりの焼酎の飲み比べに加え、[OPEN BOOK]の田中開さん、[EUREKA!]の千葉麻里絵さん、さらには[NOMURA SHOTEN][Quarter Room]の野村空人さんなど、このシーンを更に面白くするキーパーソンたちが直々にオリジナルドリンクを振る舞った。

野村空人さんが作った芋焼酎「明るい農村」のオレンジハイがウェルカムドリンク。ココナッツウォーター、ソルトウォーター、オレンジパルプソーダ、さらに少し焦がしたローリエで香りづけをした限定メニュー

ここでは、イベント内で行われたトークセッションの模様をお届け。田中開さん、千葉麻里絵さんの二人に、編集長・稲田浩が話を聞いた。

写真中央に千葉麻里絵さん、右に田中開さん

「焼酎で楽しいこと」が始まってきた

田中 新宿のゴールデン街で8年くらいレモンサワー専門店(2016年から新宿ゴールデン街に[OPEN BOOK]と、2023年9月から新宿御苑に[OPEN BOOK 破])をやらせてもらってます、田中開と申します。

千葉 私は普段日本酒を専門でやっておりまして、西麻布の[EUREKA!]という日本酒とお料理を楽しんでいただくお店をやっております、千葉麻里絵と申します。

稲田 RiCE編集長の稲田と申します。よろしくお願いいたします。12月6日発売の「ジャパンスピリッツ特集」でもお二人にご活躍いただきました。開さんには特集全体の総括的な原稿を書いていただいて、大評判です。今日もそうですけど、焼酎のイベントが最近増えてきたなという感じがありますよね。

田中 焼酎で人が集まるというイメージすらなかったのが……。それこそ5年か、もっと前くらいに「日本酒になんとなく人が集まる」という空気ができて。その「なんとなく」というのが、酒場にしても重要で、お互いを繋ぐメディアのような機能を果たしている気がしていて。

千葉 「焼酎で何か楽しいことをやりたい」みたいなのが、まだなかったんだよね。

田中 焼酎で人を呼ぶ=焼酎が好きな人=ちょっとハイコンテクストでやらなきゃいけない、みたいなプレッシャーがあったような気がするんですけど、2023年に入って、とりあえず焼酎を飲みながら蔵元とも話しましょうみたいなイベントが開かれたり。あれ画期的でしたよね。

稲田 [BONUS TRACK]でやった「SHOCHU ENKAI」(10月9日開催)がまさに。面白かったですね。

「ネオ焼酎酒場」会場の様子

田中 日本酒の世界で10年前に起こっていたことと、今焼酎の世界で起こっていることはイメージがかぶるんじゃないかなって。

千葉 それはすごく思いますね。私もRiCEに出させていただいて、そこでもちょっと話したんですけど、10年前くらいに日本酒が熱くなってきた感じと、焼酎の今の感じって結構似てるなと思っていて。蔵元さんももちろん美味しいお酒を造っていて、新しいフレーバーだったりとか、造り方も変わってきていますけど、少し前まではお湯割りじゃないといけないという感じがありましたよね。ソーダ割りはダメみたいな。今はバーテンダーさんとか最先端の人たちが色々な提案をやってきていて、そこを受け入れて、なんならしっかり結果も出している。

田中 海外のバーとかの方で急に評価が上がるみたいな。アルコール慣れしている海外の人は「いやいやそのまま飲む方がうまいね」みたいな感じで、焼酎をちゃんと評価できたりする。そういうシーンもできてきているので面白いなって。

千葉 私たちが今回出している黒糖焼酎のこと、開くん説明してくれる?

田中 実は[OPEN BOOK]のレモンサワーのベースにも使っている「龍宮」という黒糖焼酎(富田酒造場、鹿児島県奄美)です。ソーダ割りにしても、お湯割りにしても美味しい、かつその中でフレーバーや広がりが違うお酒です。ソーダ割りはドライで酸が立ってくる感じで、お湯割りだと黒糖のほっこり感が出ます。レモンもいいんですけど、オレンジピールも使ってお出ししています。

千葉 オレンジピールのチョコレートってあるじゃないですか。あれをイメージして開くんが作ってくれたんだよね。黒糖の良さを引っ張ってくれるイメージ。レモンももちろん美味しいんですけど、それは芋焼酎でも麦焼酎でもできる表現だなと思って。芋焼酎も迷ったんだけどね。

黒糖焼酎「龍宮かめ仕込み」のレモンサワー/オレンジサワー

田中 このお酒だけってことではなくて、多分いろんなお酒にこういう可能性が実はあるんだなって思いましたね。黒糖ってやっぱり奄美のものなのであまりお湯割りをやらない文化圏に入ってくるんですよね。やるっちゃやるんですけど。蔵元とかに聞いても「お湯割りのイメージはあまりないな〜」とか言うんです。けど、やったら美味しいですよ。

千葉 どこで飲むかにもよるよね。奄美みたいな暑くて湿気の多いところで飲むんだったらソーダ割りで飲んだほうが美味しいけど、東京や海外での飲み方って結構いろんな表現があるんじゃないかなというのはあるよね。

同じく「龍宮かめ仕込み」の紅焙じ茶前割り燗

味、香り、そしてパーソナリティ

稲田 [EUREKA!]は焼酎も置いてますよね? 日本酒の中にどう差し込む意識でやっていますか?

千葉 置いてます! 行ったことのある蔵のお酒を4種類か5種類くらいは。個人的には行った蔵を入れるというのは日本酒と変わらないんですけど。

稲田 でも飲んで興味あるから行くわけでしょ?

千葉 そうです。日本酒のお店としてやらせていただいていますけど、麹が手繋ぎしてくれているような気がしていて。単純に美味しいから、というのもあるけど、日本酒と焼酎は麹っていう共通項で話せるのがすごくいいなと思って入れていますね。[薩摩酒造]の「彩響」も日本酒の酵母を使っていたり。

稲田 そうそう、麻里絵さんにはそのページに出ていただいて。「彩響」は米麹を使っていて、青リンゴの香りがするというユニークな焼酎。日本酒でペアリングするのと焼酎でペアリングするのは違うと思うんですけど、その合わせ方ってどう考えているんですか?

千葉 香りの掛け算みたいなことが大事ですね。リンゴの香りと相性がいいものってなんだろうって考えて、今回の企画ではクミンを入れたり。あとミントの香りも入れました。蒸溜酒は基本アミノ酸が入っていないので、料理にちゃんと油とかアミノ酸を入れないと浅くなってしまうんですよね。だから今回は豚肉を使ったりしました。

稲田 開さんは、ちょうど蔵に行っていた時に原稿を執筆してくれたんですよね。

田中 [中村酒造場]にいたときにお話をいただきましたね。「Flare」を造っているところですね。

稲田 「Flare」うまいですよね。麻里絵さんが書いた推薦文の中で「木苺の香り」ってあって、それを生み出した焼酎蔵ってどういうことなんだろうって気になりました。

田中 天然の麹に取り組んだりしているところですね。製法の面白さってのもあるんですが、最終的には「人が面白い」ってことが重要だなと感じてます。飲食店として、人が面白いところのお酒を飲みたいなって思うだけなんですよね。それ以上でも以下でもない。蔵元が東京来たときに僕らのお店に飲みに来てくれて、そういう横断的な繋がりが広がっていって、飲食店も蔵元もお互いコミュニティが似てくるみたいな。

千葉 結構パーソナルに入ってきている感じがありますよね。造ったお酒をどう売るか、どう調理するかっていうのがパーソナルに入ってこないと足りない。

田中 だから今日は蔵元がいないのにこんなに人が集まってるのが凄いと思う。

稲田 そうなんですよね。

千葉 そうだよね。

稲田 焼酎ももちろん美味しいし、焼酎を飲む人たちの場が好きだ、ということが開さんの原稿にも書かれていましたけども、それすごく大事だなって。今日もこういう場が実現しましたけど、みんな自由にいろんな飲み方をして楽しい時間を過ごせる。焼酎ならではということですね。

田中 今日はありがとうございました。また色々焼酎飲んでもらって、僕のお店でも面白い焼酎を使った体験をつくれるようにしていますし、その他いろんなお店に足を運んでもらうのがいいと思います。よろしくお願いします!

千葉 今日はありがとうございます。まだ楽しんでいってください! RiCEも買ってください! みんな載ってま〜す。

稲田 「ネオ焼酎酒場」初開催でしたけど、これだけ熱い時間になって、また次に繋げていけたらなと思います。次の機会もいらしてください! ありがとうございました!

RiCE January 2014|No.32「特集 ジャパンスピリッツ新時代」
好評発売中

田中開|Kai Tanaka
1991年、ドイツで生まれ、東京で育つ。早稲田大学基幹理工学部卒。新宿ゴール
デン街にレモンサワー専門のバー[OPEN BOOK]、新宿御苑近くに[OPEN BOOK 破]、日本橋のホテルK5内に[Bar Ao]を経営。著書に『酔っ払いは二度お会計する』がある。
IG @openbook.shinjuku

千葉麻里絵|Marie Chiba
日本酒ソムリエ、西麻布[EUREKA!]オーナー、第14代 酒サムライ。 口内調味やペアリングというキー ワードで新しい日本酒体験を作り、さまざまなジャンルの料理人や専門家ともコラボレーショ ンし、新しい日本酒のスタイルを日々模索。2019年には日本酒や日本の食文化を世界に発信する「酒サムライ」に叙任。国内外の日本酒ファンを魅了し続けている。
IG @eureka.sake

Photo by Teppei Iwagami
Text by Yoshiki Tatezaki
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