カリフォルニアの生産現場でわかったこと

おいしいアーモンドへの旅 (後編)


RiCE.pressRiCE.press  / Oct 3, 2018

世界のアーモンドの80パーセントが生産されているカリフォルニア。そこでは、どうやって栽培、収穫されているのか。その生産現場を見てみませんかとのお誘いをいただき実現したおいしいアーモンドへの旅。後編ではいよいよアーモンド農園へと向かいます。 (前編はこちら)

DAY2 アーモンド農園と加工場へ

翌日ランチのあと、農園へ。ちなみにランチのサンドイッチのビュッフェにはアーモンドバターもありました。ここで暮らしていたらすぐ健康になれそう。

ホテルから車で30分。途中そこかしこにワイナリーの看板や試飲を勧めるサインが。着いたのはヒルトップ・ランチ。塀のない門を通ると、一瞬キャベツを食べた後のおならのような匂い……。スカンクがいたとのこと。この辺りにはスカンクやラクーン、鹿など野生動物もいるそう。

ヒルトップ・ランチはアーモンド農園と付属の加工場のほか、さつまいも、ベリー、飼料用コーン、ワイン用葡萄も栽培、畜牛も行っている。案内してくれたのはヴァイス・プレジデントのデクスター・ロングさん (写真) 。祖父の代からアーモンド農家だったが、80年代から加工業に進出、いまは加工業メインに転換していて、アーモンド農園はせいぜい100エーカーだよとおっしゃる。100エーカーって東京ドーム8.5個分……日本では巨大なんですが……。しかしアメリカでは100エーカー以下は小規模農園ということになるのね。

この農園で育てられているアーモンドは明治やロッテのチョコレートに使われているほか、スライス、ダイスなどに加工され販売されているそう。農園といえば都会の人間からすると大自然のイメージだけど、こちらは乾燥した土地に実をつけたアーモンドが整然と並び、収穫はすべて機械で行われて、しっかり管理されている。実は梅にそっくり。古代の地殻変動で、同一の原種だったのが桃とアーモンドに別れたもので、気候が温暖な中国などで進化したのが桃、乾燥した小アジアで進化したのがアーモンドなんだとか。

樹になっているものを食べてごらんと手渡されたら、生アーモンドよりももっと香りがよく、わずかにみずみずしい。結実したてはもっとみずみずしいそう。なりたてのアーモンドは農園以外では地元でも一部のハイエンドなレストランでしか食べられないのだそうです。

アーモンドの実は自然に落ちてきたりしないので木を揺らして落とす必要があり、シェーカーと呼ばれる専用トラックが走る。車体から出ているアームが幹をがっしり掴み、ゆさゆさ揺する。文字にすると恐ろしげかな? 実際は『チキチキマシーン猛レース』や『タイムボカン』の改造カーのように可愛らしいものです。

シェーカーが通って実が落とされたら、1週間ほどそのまま乾燥させます。

乾燥させたらスイーパーの出番。今度は清掃車のような車で落ちた実を道の真ん中に集めます。

最後にピック・アップが走ってその実を回収。掃除機のようなもので吸い上げられて、荷台にどんどんアーモンドが溜まっていく。収穫期は畑によってまちまちなので、このアニメに出てきそうな車たちは10月まで農園のどこかしらで働いていることになりますな。どの車が通ったあとも、土ぼこりがもうもうと立つのだけど、ピック・アップが通ったあとは特にすごい。髪も肌も土まみれでざらざらに。

集められたアーモンドは加工場へ。外皮と殻、さらに殻と実を機械で分ける。さっき吸い上げられたアーモンドが枝や葉っぱを落とされ、外皮を取られ、コンベアで移動して順々に裸にされていく。轟音を立ててコンベアが動いていく。音に圧倒されるけれど、コンベアベルトに乗っているのが小さなおいしいアーモンドというのが可愛く感じられる。殻と実を分けるのには日本の精米機器メーカー、サタケの機械が。もともとは米の仕分け用だったのがアーモンド専用に改良されたもので、農園ではクボタのトラクタも使われていました。

巨大なアーモンド産業とそのサステナビリティ

加工場では、この農園以外の22000エーカーの農地からもアーモンドを購入し加工していて、その15パーセントが米国内で消費され、残りが70カ国へ。中国やインドへの輸出も増えているそう。現在、世界のアーモンド生産量140万トンのうち80パーセントがカリフォルニア州の500マイル (804キロメートル) の範囲内で育てられていて、カリフォルニア州で生産されている農産物品目の中で、アーモンドは輸出額トップの110億ドル。カリフォルニアでいちばん稼いでいる農作物といえば、オレンジでも米でもなく、アーモンドなのです。

しかし昨年までの干ばつでは逆風も。水を大量に必要とする作物として槍玉に挙げられたのです。ベジタリアンが多くアーモンドミルクがファッショナブルになっていた欧米では、ショッキングなニュースだったよう。しかし農家側も、マイクロ灌漑システムという根元にだけ水が行き渡るような仕組みやスプリンクラーの小型化などで水の使用量を20年前と比べて33パーセント削減。アーモンドが水を必要としない冬季に農園全体に水を張って地下水を補充するなどいろいろな水対策を試みているそう。サステナビリティについても、外皮 (桃や梅などでいえば果肉の部分) や殻は家畜の飼料や敷き藁に、枝はバイオマスにするなど廃棄物ゼロの取り組みを行い、最近では二酸化炭素を出さないよう高温処理して炭化した外皮や殻をプラスチックの再処理原料にする実験も。外皮は用途が広く、ビールやシードルの醸造、キノコ栽培用の菌床、蜂や虫の飼料にも使われているのです。サステナビリティと水の問題には誰もが真剣で、案内してくれたロングさんも、それらの委員会に所属。「アーモンドは素晴らしい木の実だ。私は人生を賭けている」

小さな木の実の長い物語。結婚式で必ずもらうドラジェはただ可愛いから配っていたわけじゃなくて、アーモンドが古来からの豊かさと幸福のシンボルだったから。なおかつ、生産者が人生を賭けると言い、10万4000もの雇用を生み出しているスーパーフード、それこそがアーモンドなのでした。

CREDIT
Text by Kyoko Endo

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