おいしい裏話

「焼きそばの極意」(RiCE No.21)に寄せて


Banana YoshimotoBanana Yoshimoto  / Feb 17, 2022

ラードで焼くとか、肉はどのくらいとか、みなさんいろいろなこだわりを持っているんだと思うけれど、結局は鉄板の油なじみと火力の問題だ思う。
これまでおいしいと感じた焼きそばはみんな高温で作られていて端っこはちょっとカリッとなりそうな寸前だった。 

今は誰が焼いているのか定かではないのだが、千駄木に「花乃家」という焼きそば屋がある。夜は飲み屋になるお店。
小学生だったから夜の部には行ったことがないが、ここのおばあちゃんが焼く「肉玉焼きそば」は天才的だった。おばあちゃんが引退してお父さんが後を継いだ。味はすばらしかったけれどキレが違う。今はどうなっているのだろう。
極意はなんと化学調味料。
そのさじ加減が奇跡の味をもたらしていた。肉と卵が両方入っているのに、味がぼけていなかった。
私と友だちは毎日のようにそこで焼きそばを食べた。250円くらいだったような記憶がある。友だちは鍵っ子で、お母さんが私といっしょになにか食べてきな、とお金をくれるのだった。申し訳ないからたまに私がごちそうしたり、家にその子を呼んで晩ごはんを食べたりした。
こんなにも焼きそばが重要な地位を占める人生になるなんて、思ってもみなかった。

花の家
東京都文京区千駄木2-44-19
17:00~21:00
日曜定休

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